介護 離職率 推移(2024年版):なぜ高止まりが続くのか、施設が今とるべき定着改善策
「採用してもすぐ辞める」「夜勤要員が慢性的に不足している」。介護施設の施設長・人事担当者からいただくご相談の多くは、採用コストの問題よりも前に、まず離職率の高さに行き着きます。
介護職員の離職率は近年も全産業平均と同水準で推移しており、特定の施設では年間 20% を超えるケースも珍しくありません。厚生労働省が定める処遇改善加算が段階的に拡充されてきたにもかかわらず、なぜ介護 離職率 推移は抜本的な改善を示さないのでしょうか。
この記事では、介護労働安定センターの公表データをもとに過去 10 年の介護 離職率 推移を整理し、構造的な要因を分析します。そのうえで、施設長・採用担当者がすぐに着手できる定着改善策をチェックリスト形式でまとめます。
この記事でわかること
- 令和 5 年度(2023 年度)時点の介護職員離職率と過去 10 年の推移
- 離職の主な理由と処遇改善加算の効果の限界
- 施設が実際に失敗するパターンとその回避策
- 外国人介護士の活用が離職率改善にどうつながるか
- 施設長・採用担当がすぐ使える定着改善チェックリスト
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介護職員の離職率推移:過去10年のデータで見る実態
介護労働安定センターが毎年公表する「介護労働実態調査」によると、令和 5 年度(2023 年度)の介護職員全体の離職率は 14.8% です(2024 年公表)。
(図解候補:介護職員離職率の推移グラフ 平成 26 年度〜令和 5 年度。全産業平均との比較折れ線グラフ。)
過去 10 年の推移を時系列で見ると、制度改正の節目ごとに明確な変化が読み取れます。
推移の概要(2014〜2023年度)
平成26年度(2014年度)
- 離職率: 17.3%
- 背景: 介護職員処遇改善加算の導入直後。賃金水準は全産業対比で依然大きく低く、募集・採用と同時進行で人材が流出していた時期。
平成30年度(2018年度)
- 離職率: 15.4%
- 背景: 処遇改善加算の段階的拡充が一定の効果を示しはじめた。ただし業界全体の慢性的な担い手不足は継続し、離職率は全産業平均を上回る水準にとどまった。
令和3年度(2021年度)
- 離職率: 13.3%
- 背景: 新型コロナウイルスの影響で転職市場全体が冷え込み、離職率が一時的に低下。施設側の感染対策への不安もあり、転職を先送りする傾向が業界全体で強まった特異な年。
令和4年度(2022年度)
- 離職率: 14.7%
- 背景: コロナ禍の特需的低下から反発。業界全体の人手不足が再燃し、転職市場の回復とともに離職者数が戻った。
令和5年度(2023年度)
- 離職率: 14.8%
- 背景: 微増。介護職員等ベースアップ等支援加算(2022 年 10 月創設)の効果は賃金底上げに一定寄与したが、根本的な改善には至っていない。
(出典:介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果の概要」2024 年公表)
全産業平均との比較では、厚生労働省「雇用動向調査」(令和 4 年)が示す全産業の離職率は 14.9% です。かつては介護業界が全産業を 5〜7 ポイント上回っていた時期もありましたが、近年は同水準まで縮まっています。これは処遇改善施策の一定の成果ですが、「改善した」と楽観できる水準ではありません。
厚生労働省の推計によると、2040 年度には現状の人員配置基準と需要増加を前提として約 69 万人の介護職員が不足するとされています(「第 9 期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。離職率を 1〜2 ポイント抑制するだけでも、必要採用数を大幅に削減できる計算になります。採用コストの削減だけでなく、中長期の施設経営にとって定着率の向上は不可避の課題です。
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離職の主な理由:調査データが示す現場の本音
介護労働安定センター「令和 5 年度介護労働実態調査」では、離職者が挙げた理由のうち上位に並ぶのは以下のものです。
- 職場の人間関係に問題があった(上司・同僚との対人トラブル)
- 仕事内容のわりに給与が低かった(処遇への不満)
- 法人・施設の理念や運営方針への不満
- 身体的負担が大きかった(腰痛・夜勤・感染リスクへの不安)
- 将来のキャリアアップが見通せなかった
注目すべきは、1 位が「給与」ではなく「人間関係」である点です。処遇改善加算の拡充は賃金底上げに寄与しましたが、職場の人間関係に由来する離職には直接作用しません。金銭的な改善を重ねても離職が止まらない施設では、マネジメント面の課題が残されていることが多いと言えます。
雇用形態別に見ると、常勤職員の離職率と比べて非常勤・パート職員の離職率が高い傾向があります。非常勤スタッフが急に離職すると、その穴を常勤が埋めることになり、常勤職員の負担増加から連鎖的な離職につながるケースが現場で繰り返されています。
また、見落とされがちなのが入職 1 年未満での早期離職です。介護職員全体の離職のうち、相当割合が入職後 1 年以内に発生しています。採用コストが最も回収できていない段階での離職であり、入職初期の育成体制(オンボーディング)の質が定着率に直結することを示しています。
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介護現場でよくある相談
ともにケアを運営するユアブライト株式会社には、施設長・採用担当から次のようなご相談が多く届きます。
「採用して半年で辞められた。また最初からやり直しです」
多くの場合、離職の予兆はその職員の入職後 2〜3 か月の時点で現れています。「業務の習得ペースが周囲より明らかに遅い」「夜勤の申し送りで発言が減った」「有給申請が急増した」といった変化が先行しているにもかかわらず、施設側がキャッチできていないケースが目立ちます。
「処遇改善加算をフル活用しているのに離職が止まらない」
介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の 3 加算は、2024 年度改定で統合・拡充されました。しかし加算の配分が特定の職員に集中している施設では、不公平感から中堅職員が辞めるケースが発生しています。加算額だけでなく、配分ルールの透明性も離職に影響します。
「中途採用は来るが、定着しない」
中途採用者は転職経験があるぶん、再転職のハードルが低い面があります。入職後 3 か月・6 か月・1 年のタイミングで上長との面談を設ける「定点フォロー」を実施している施設は、そうでない施設より初期離職率が低い傾向があります。面談の内容は評価ではなく「困っていることの共有」に徹することが重要です。
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受入れ施設の失敗パターンと回避策
施設が定着対策で失敗する場面は、大きく「採用フェーズ」と「定着フェーズ」に分かれます。
採用フェーズの失敗
失敗パターン1:情報開示が不十分なミスマッチ採用
求人票に「夜勤あり」「身体介護メイン」と記載していても、面接時に夜勤回数・ユニット体制・1 日の業務フローを具体的に伝えていないと、入職後に「聞いていた内容と違う」という理由で退職するケースが起きます。
回避策として、採用選考の段階でシフト例・業務フロー説明シートを使い、入職前の認識合わせを徹底することが有効です。
失敗パターン2:欠員補充を急ぐあまりの適性確認不足
既存スタッフとの人間関係で摩擦を生む人材を採用してしまうと、既存スタッフが「また採用ミスだ」と感じ、既存スタッフ側の離職動機にもつながります。急いで採用することで離職の連鎖が起きる、という逆効果に注意が必要です。
定着フェーズの失敗
失敗パターン3:OJT が特定の先輩に属人化している
「先輩の見よう見まね」だけで業務を習得させる施設では、その先輩職員が異動・退職すると教育クオリティが突然崩壊します。業務マニュアルの整備と、OJT 担当者のローテーション設定が根本的な解決策です。
失敗パターン4:不満を可視化する仕組みがない
月 1 回の全体ミーティングだけでは、個人の不満は表に出てきません。1on1 面談・匿名アンケート・退職者へのヒアリング(exit interview)を組み合わせて、離職の予兆を早期にキャッチする仕組みを持つことが重要です。
介護業界の人手不足の構造的な背景については、介護人手不足の現状と施設が取るべき対策でも詳しく解説しています。
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採用担当者が見落としやすいポイント
離職前兆サインのリスト
以下の行動変化が複数重なって現れた場合、離職を検討している可能性があります。
- 業務中の発言・提案が目に見えて減った
- 有給取得の頻度が急に増えた
- 勉強会・院内研修への参加意欲が落ちた
- 同僚との会話時間が明らかに短くなった
- 「将来のことを相談したい」という申し出がなくなった
特に「不満を言わなくなった」状態は、あきらめて転職先を探し始めているサインである場合があります。定期的な 1on1 面談を設けて、小さな不満をキャッチする機会を意図的につくることが大切です。
入職初日の体験設計の重要性
採用担当者が見落としやすいのが、入職初日の体験です。「配属先に着いたら先輩職員に任せた」という施設では、新人職員が最初の数日で「この施設は自分に合わない」と判断してしまうことがあります。
入職初日のオリエンテーション(施設の理念・業務の流れ・緊急時の連絡体制・相談窓口の紹介)を採用担当者が直接実施している施設は、初期離職率が低い傾向があります。採用活動は「内定通知後」で終わるのではなく、「入職から 3 か月後」まで採用担当者の責任範囲に含めるという考え方が定着率を高めます。
退職理由の集計と採用戦略への反映
exit interview を実施している施設でも、得られた情報を採用戦略に反映していないケースが少なくありません。退職理由を半期ごとに集計し、「どの職種・雇用形態・勤務年数の離職が多いか」を分析することで、採用要件や入職後支援の優先順位が明確になります。
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外国人介護士の活用と離職率改善の接点
近年、特定技能介護・在留資格「介護」・技能実習修了者といった外国人介護士を採用する施設が増えています。外国人介護士の導入は人員補充だけでなく、施設の人員構成の安定化に寄与するケースが現れています。
外国人介護士が入職すると、日本人職員が業務説明や指導を担う機会が増えます。この「教える役割」の付与が、ベテラン職員の仕事への意義づけを高め、定着意欲を後押しするという報告があります。「教えることで自分のスキルを再確認できた」という声は、弊社が支援する施設からも複数届いています。
特定技能介護の制度概要は特定技能介護の制度ガイドを、実際の受入れの流れについては外国人介護士の受入れ実例をご参照ください。
外国人介護士の定着に必要な条件
外国人介護士の離職は、入職後 6〜12 か月以内に集中する傾向があります。主な原因は以下の通りです。
- 業務中の日本語コミュニケーションへの不安(特に夜勤の申し送り)
- 生活面のサポート不足(住居の確保・銀行口座・行政手続き)
- 職場内での孤立(日本人スタッフとの業務外の接点が少ない)
これらを防ぐために、母国語対応のサポートスタッフを持つ登録支援機関との連携が有効です。入職後 3 か月間の集中フォロー体制を組むことで、早期離職のリスクを大幅に低減できます。受入れにかかるコストの詳細は外国人介護士の受入れコスト内訳も参考にしてください。
また、外国人介護士の定着率は、受入れ前の準備段階での丁寧な説明に大きく左右されます。「こんな業務があるとは思わなかった」という入職後のギャップを減らすことが、長期定着の第一歩です。
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実務チェックリスト:施設長・採用担当が今すぐ確認すべき項目
採用プロセスの確認
- 求人票に夜勤回数・シフトパターン・ユニット構成を具体的に記載している
- 面接で「どんな場面で仕事が辛くなるか」を候補者に問いかけている
- 内定から入職日までの間に連絡を 1 回以上取っている
- 入職初日のオリエンテーションを採用担当者が主導して実施している
- 試用期間中(入職 1〜3 か月)の定点面談を月 1 回以上設定している
職場環境・処遇の確認
- 処遇改善加算の配分ルールを全職員に文書で説明している
- 夜勤回数の平均を月 4〜5 回以内に抑えられている
- OJT 担当者が特定の先輩職員に固定されていない
- 匿名で意見・不満を伝えられるアンケート等の仕組みがある
- キャリアアップ・昇格の基準を明文化して周知している
離職兆候への対応
- 1on1 面談を月 1 回以上、管理職が全員分実施している
- 退職の申し出があった際に必ず exit interview を実施している
- 退職理由を半期ごとに集計・分析し、採用要件に反映している
外国人介護士受入れの確認
- 入職後 3 か月間の集中フォロー体制を事前に組んでいる
- 母国語対応または通訳サポートにアクセスできる連絡先を確保している
- 登録支援機関との支援内容(頻度・担当者・緊急連絡体制)を文書で確認している
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よくある質問(FAQ)
Q. 介護職員の離職率は全産業と比べてどれくらいの水準ですか?
令和 5 年度(2023 年度)の介護職員離職率は 14.8%(介護労働安定センター調査)です。厚生労働省「雇用動向調査」による令和 4 年の全産業平均は 14.9% であり、以前のように介護業界が全産業を大幅に上回る状況は改善されています。ただし、介護は夜勤・身体的負担・感情労働が重なる特性があり、数値だけで「改善した」と判断するのは早計です。施設単位で自施設の離職率を把握し、業界平均との比較に加えて前年比の変化を追うことが重要です。
Q. 処遇改善加算をフル活用しているのに離職が続く場合、何が原因として考えられますか?
処遇改善加算は賃金底上げには有効ですが、「職場の人間関係」「キャリアパスの不透明さ」「OJT 体制の問題」など金銭以外の離職要因には直接作用しません。特に入職 1 年未満の早期離職は、入職初期の育成体制と職場の人間関係に起因することが多く、加算とは別の対応が必要です。加えて、加算の配分ルールが不透明だと職員間の不公平感が生まれ、中堅職員の離職動機になることもあります。
Q. 外国人介護士は日本人職員と比べて定着しやすい傾向がありますか?
一概には言えませんが、来日後の生活サポートと業務サポートが整っている施設では、外国人介護士の定着率が日本人職員と同程度またはそれ以上というケースも報告されています。支援体制の質が定着率の差異を生むため、受入れ前の体制整備が決め手になります。逆に、受入れ後のフォローが不十分な施設では、外国人介護士の早期離職率が高くなる傾向があります。
Q. 小規模施設でも実施できる低コストの離職防止策はありますか?
月 1 回の 1on1 面談と、退職者への exit interview は追加コストなしで始められる最も効果的な施策です。また、夜勤の公平な割り当てと、処遇改善加算の配分ルール周知も即効性があります。外部研修機会の費用の一部補助(数千円程度でも可)は、キャリアアップへの投資として職員の定着意欲を高める効果があります。
Q. 介護 離職率 推移は今後どう変化すると予測されますか?
2024 年度介護報酬改定での処遇改善加算の統合・拡充や、政府の介護従事者確保総合対策の進展によって、一定の改善効果は期待できます。しかし 2025 年以降の団塊世代の後期高齢化による需要増加と担い手の高齢化・減少が同時進行するため、構造的な人手不足が解消される見通しはありません。個々の施設が採用力・定着力を高める自助努力が、これまで以上に重要になる局面です。
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外国人介護士の受入れを検討中ですか?
「離職が続いて慢性的な人員不足に悩んでいる」「外国人介護士を受け入れたいが何から始めればよいかわからない」というご相談を多くいただきます。
ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、17 万人超の在日外国人データベースをもとに、特定技能介護・在留資格「介護」・技能実習修了者の人材紹介を行っています。初期費用・運用費用は 0 円〜で、内定が出た時点のみ費用が発生する完全成功報酬型です。
- 電話: 03-6908-6143(平日 9:00〜18:00)
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参考文献
- 介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果の概要」(2024 年公表)
- 厚生労働省「介護人材の確保・処遇改善」