特定技能'介護'とは?制度の基本から受入れ条件・キャリアパスまで解説

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特定技能'介護'は、介護分野の人手不足に対応するために設けられた在留資格であり、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を即戦力として受け入れる仕組みです。2025年10月末時点で約55,700人の外国人が特定技能'介護'で在留しており、制度の活用は年々広がっています。しかしながら、受入れ要件や手続きの詳細まで正確に把握している施設は、まだ多くないかもしれません。そこで、介護施設の管理者や経営者に向けて、特定技能'介護'の制度概要から受入れ条件、キャリアパスまでを体系的に解説します。

制度の一次情報は、出入国在留管理庁の特定技能制度ページ(出入国在留管理庁 特定技能制度)、厚生労働省の介護人材受入れ解説(厚生労働省 外国人介護人材受入れの仕組み)、介護労働安定センターの実態調査(介護労働安定センター 介護労働実態調査)に集約されています。判断に迷ったら、まずこの 3 つにあたる運用が安全です。

特定技能'介護'とはどんな制度?

特定技能'介護'は、2019年4月に創設された在留資格で、介護技能評価試験と日本語試験に合格した外国人を即戦力として受け入れる仕組みです。2025年10月末時点で約55,700人が在留しており、2年弱で約2倍に増加しました。在留期間は通算最長5年ですが、介護福祉士の国家資格を取得すれば在留資格'介護'に変更でき、在留期間の制限なく長期就労が可能になります。

特定技能'介護'は他の在留資格と何が違う?

特定技能'介護'を正しく理解するためには、制度が生まれた背景と、類似する在留資格との違いを押さえておくことが重要です。ここでは、制度の基本構造を整理していきましょう。

人手不足の解消を目的に創設された在留資格

特定技能とは、2019年4月にスタートした在留資格の一つです。日本国内で深刻化する人手不足に対応するため、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を即戦力として受け入れることを目的に創設されました。それまでの技能実習制度は'技術移転による国際貢献'が建前上の目的であり、労働力の確保を正面から認めたものではありませんでした。特定技能は、日本で初めて人手不足の解消を制度の目的として明示した点で、大きな転換点と言われています。

介護分野は制度開始当初から対象分野に含まれており、特定技能の対象となる全分野の中でも特に活用が進んでいる領域です。2023年12月末時点で約28,400人だった介護分野の在留者数は、2025年10月末には約55,700人にまで増加しており、介護施設にとって欠かせない人材確保の手段になりつつあります。

1号と2号の2段階構成を理解する

特定技能には'1号'と'2号'の2つの区分が設けられています。1号は、相当程度の知識や経験を持つ外国人を対象としており、在留期間は通算で最長5年です。一方、2号は熟練した技能を持つ外国人が対象で、在留期間の上限がなく、条件を満たせば家族の帯同も認められます。

介護分野では、多くの外国人がまず1号として来日し、経験を積みながらキャリアアップを目指す流れが一般的です。なお、介護分野には特定技能2号の区分が設けられていませんが、後述するように介護福祉士の国家資格を取得することで、在留資格'介護'への変更という独自のキャリアパスが用意されています。

技能実習制度との根本的な違い

特定技能と混同されやすいのが技能実習制度ですが、この2つは制度の目的がまったく異なります。技能実習は国際貢献が目的であるため、原則として転職が認められていません。一方、特定技能は人手不足の解消が目的であり、同じ介護分野内であれば転職も可能です。

この転職の可否は、働く外国人にとって非常に大きな違いと言えるでしょう。特定技能では転職が制度上認められているため、介護施設側にも'選ばれる職場づくり'が求められます。外国人介護士を受け入れる際の在留資格の全体像を把握しておくと、採用戦略を立てやすくなるでしょう。

介護現場でよくある相談:特定技能'介護'受入れ前の判断ケース

ともにケア編集部に施設長・採用担当からいただく、特定技能'介護'導入前後の相談を 3 つ紹介します。匿名化した介護現場の実ケースです。

ケース1:登録支援機関の選び方で迷い、受入れ準備が 3 か月遅れた

ある特別養護老人ホームでは、登録支援機関の選定を慎重にしすぎて 3 か月以上比較検討した結果、入国予定が翌期にずれ込み、計画していたシフト体制を組めなかった事例があります。回避策 としては、出入国在留管理庁の登録支援機関 検索ページを施設長と人事で同時に確認し、'最初の 3 件で 2 週間以内に面談、4 週間以内に決定' という社内判断基準を先に立てることです。

ケース2:協議会加入を後回しにして 4 か月期限に間に合わなかった

最初の特定技能介護人材を受け入れた施設で、現場の受入れ業務に追われて'介護分野特定技能協議会'への加入手続きを失念し、加入期限の 4 か月を 2 週間ほど超過したケースです。協議会加入は厚生労働省ルールで義務化されており、未加入は重大な手続き違反です。回避策 は、受入れ初日にカレンダーに加入期限を入力し、施設長と登録支援機関の双方でリマインドする運用です。

ケース3:日本語 N4 合格者だけで配置し、夜勤の申し送りで事故寸前

JLPT N4 合格直後の特定技能介護人材を、入職 2 か月で夜勤帯に配置したところ、認知症利用者の体調変化を申し送れず、ヒヤリハットが発生したケースです。回避策 は、N4 合格はあくまで入口で、介護日本語評価試験合格+ OJT 3 か月+夜勤陪席 5 回を経てから単独夜勤を許可する、という社内基準を作ることです。

特定技能'介護'を取得するには何が必要?

特定技能'介護'を取得するためには、外国人本人が複数の試験に合格する必要があります。ここでは、介護分野特有の要件を詳しく見ていきましょう。

介護技能評価試験への合格が必要

特定技能'介護'を取得するためには、まず'介護技能評価試験'に合格する必要があります。この試験では、介護の基本的な考え方やコミュニケーション技術、生活支援技術、安全衛生などに関する知識と実技が問われます。試験は国内だけでなく、フィリピン、ベトナム、インドネシアなど海外でも実施されているため、来日前に合格して準備を進める外国人も少なくありません。

つまり、特定技能'介護'で来日する外国人は、すでに介護の基礎知識を備えた人材ということになります。この点は、採用を検討する施設にとって安心材料になるのではないでしょうか。

日本語能力試験N4と介護日本語評価試験の2つが求められる

介護分野では、日本語に関する要件が他の分野よりも手厚く設定されています。まず、日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)への合格が求められます。加えて、介護分野特有の要件として'介護日本語評価試験'への合格も必要です。

介護日本語評価試験では、介護の現場で使われる専門用語や、利用者・スタッフとのコミュニケーションに必要な日本語力が問われます。一般的な日本語力だけでなく、介護現場で必要な語彙を身につけていることが制度上担保されている仕組みです。そのため、受入れ施設としては、基本的な業務コミュニケーションが成立する水準の人材を確保しやすいと考えていいでしょう。

特定技能'介護'を正しく理解するためには、制度が生まれた背景と、類似する在留資格との違いを押さえておくことが重要です

受入れ施設にはどんな条件が求められる?

外国人本人の要件だけでなく、受入れ側の施設にもさまざまな条件が課されています。ここでは、介護施設が特定技能外国人を受け入れるために満たすべき条件を整理します。

対象となる施設の種類と人数枠

特定技能'介護'の受入れ対象となる施設は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、通所介護(デイサービス)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)など、介護保険サービスを提供する幅広い施設が含まれます。加えて、2025年4月からは訪問介護事業所での受入れも解禁されており、対象範囲はさらに広がっています。

受入れ人数には上限が設けられており、事業所における日本人等の常勤介護職員の総数が上限となります。たとえば常勤の日本人介護職員が10人いる施設であれば、特定技能外国人も最大10人まで受け入れることが可能です。この枠組みにより、外国人スタッフだけに依存しない体制が維持される仕組みになっています。

支援計画の策定と登録支援機関の活用

特定技能1号の外国人を受け入れる施設には、'支援計画'の作成と実施が義務づけられています。具体的には、入国前の生活ガイダンス、空港への送迎、住居の確保、日本語学習の機会提供、定期的な面談など、10項目にわたる支援が求められます。

これらの支援をすべて自施設で行うことも制度上は可能ですが、介護業務と並行して対応するのはかなりの負担になることも少なくありません。そこで多くの施設が活用しているのが'登録支援機関'です。登録支援機関は出入国在留管理庁に登録された機関で、支援業務の全部または一部を委託できます。初めての受入れでは、外国人採用の流れを把握したうえで、専門機関に相談することをおすすめします。

介護分野特定技能協議会への加入が必須

介護分野では、特定技能外国人を受け入れる施設に対して'介護分野特定技能協議会'への加入が義務づけられています。この協議会は厚生労働省が設置したもので、制度の適正な運用や情報共有を目的としています。初めて特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に加入する必要があるため、受入れ準備の段階でスケジュールに組み込んでおくと安心です。

2024年4月からの5年間で、介護分野全体の受入れ上限は135,000人と設定されています。この数字からも、政府が介護分野における外国人材の活用を積極的に推進していることがわかるでしょう。

採用担当者・施設長が見落としやすいポイント

特定技能介護の受入れは制度面・実務面の両方で見落としが起きやすい領域です。次の判断基準で点検しておくと安全です。

  • 協議会加入の期限管理:初回受入れから 4 か月以内、というルールを年次カレンダーで管理しているか。
  • 登録支援機関への業務委託範囲:支援 10 項目のうち、どこを内製しどこを委託したかが文書で明確になっているか。
  • 転職リスクへの備え:特定技能では転職が認められるため、'選ばれる職場' の現状を月次で振り返っているか(給与・夜勤手当・住居支援など)。
  • 介護福祉士キャリアパス支援:在留 5 年目までに国家試験合格を目指せるよう、学習支援や受験料補助の社内制度が用意されているか。
  • 訪問介護への展開判断:2025 年 4 月の制度改正で訪問介護も対象になったが、自施設で必要な追加要件(同行訪問・利用者説明等)を満たせるかを判断しているか。

図解:特定技能'介護'受入れ準備のロードマップ

受入れ準備は、次の 5 ステップの図解フローで整理すると、関係者の合意が取りやすくなります。

  1. Step 1 — 受入れ意思決定(経営層判断):人手不足の数字・既存スタッフへの説明計画を整える。
  2. Step 2 — 登録支援機関の選定(4 週間以内):3 機関と面談、社内判断基準で 1 機関を選ぶ。
  3. Step 3 — 受入れ条件の整備(2 か月):住居・送迎・生活ガイダンス・日本語学習支援を準備。
  4. Step 4 — 入国・在留資格手続き(出入国在留管理庁):在留資格認定証明書の交付期限を逆算してスケジュール化。
  5. Step 5 — 入職後 4 か月以内に協議会加入:厚生労働省ルールの届出を済ませる。

このロードマップを A4 1 枚の図解にして経営会議で配布すると、判断のスピードが上がります。

実務チェックリスト:特定技能'介護'受入れ前の確認 10 項目

施設長・採用担当・主任が、受入れ前に確認しておきたい 10 項目です。期限・届出も含めて整理しました。

  • 受入れ可能人数(日本人常勤介護職員の総数)を確認したか
  • 登録支援機関を 3 機関比較し、社内判断基準で選定済みか
  • 入国前生活ガイダンスの実施計画(日本語・母語の併用)が用意されているか
  • 住居の確保と通勤動線の確認が済んでいるか
  • 介護分野特定技能協議会の加入期限(初回受入れから 4 か月)をカレンダーに登録したか
  • 介護技能評価試験・JLPT N4・介護日本語評価試験の合格証を確認したか
  • OJT 計画(夜勤への移行は最短 3 か月以降)の判断基準が明文化されているか
  • 介護福祉士受験支援(教材費・受験料・学習時間)の社内制度が整っているか
  • 転職リスクに対する '選ばれる職場' KPI(給与・夜勤手当・住居支援)を月次で点検しているか
  • 訪問介護で受入れる場合は、同行訪問・利用者家族説明の手順を整えたか

介護福祉士を取得すると何が変わる?

特定技能'介護'の大きな特徴の一つが、介護福祉士の国家資格取得を通じた長期就労への道が開かれている点です。ここでは、外国人介護士のキャリアパスについて解説します。

5年の在留期間中にキャリアアップを目指す

特定技能1号の在留期間は通算5年が上限です。この5年間は、単に労働力として働くだけでなく、介護の技能を高めながらキャリアアップを目指す期間と位置づけることができます。日々の業務で実務経験を積みながら、介護福祉士の国家試験に向けた学習を並行して進める外国人も増えてきました。

施設側としても、特定技能外国人がスキルアップできる環境を整えることが、長期的な人材確保につながります。研修の機会を提供したり、日本語学習を支援したりすることで、外国人スタッフのモチベーション維持に大きく寄与するでしょう。

介護福祉士を取得すれば在留期間の制限がなくなる

特定技能'介護'で働く外国人が介護福祉士の国家資格を取得した場合、在留資格を'介護'に変更することが可能です。在留資格'介護'には更新回数の上限がないため、実質的に日本で長期にわたって介護の仕事を続けることができます。家族の帯同も認められるため、生活基盤を日本に置いて腰を据えて働く選択肢が開かれる仕組みです。

このキャリアパスは、介護分野に特定技能2号が設けられていない代わりに用意された独自のルートと言えます。介護福祉士の取得は決して簡単ではありませんが、合格すれば在留期間を気にせず働き続けられるという大きなメリットがあるため、外国人材にとっても強い動機づけになるでしょう。介護業界の人手不足の現状を踏まえると、こうした長期的な人材育成の視点がこれからの施設運営において重要性を増していくと考えられます。

まとめ

特定技能'介護'は、介護分野の深刻な人手不足に対応するために創設された在留資格であり、一定の介護技能と日本語能力を備えた外国人を即戦力として受け入れる仕組みです。受入れ対象施設の拡大や在留者数の増加が示すとおり、制度の活用は今後さらに広がっていくことが見込まれます。

外国人介護士を'ともに現場を支える仲間'として迎え入れ、介護福祉士へのキャリアパスを見据えた長期的な育成計画を立てることが、これからの施設運営において大きなアドバンテージになるでしょう。外国人介護士の採用や受入れについてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 特定技能'介護'と技能実習の違いは?

A. 最大の違いは制度の目的です。技能実習は国際貢献を目的としており原則転職ができませんが、特定技能は人手不足解消が目的で、同じ介護分野内での転職が認められています。受入れ施設には'選ばれる職場づくり'が求められる点も大きな違いです。

Q. 特定技能'介護'に必要な試験は何がある?

A. 介護技能評価試験、日本語能力試験N4以上(またはJFT-Basic)、および介護日本語評価試験の3つに合格する必要があります。介護日本語評価試験は介護分野特有の要件で、介護現場で使われる専門用語の理解度が問われます。

Q. 1つの事業所で何人まで受け入れられる?

A. 受入れ人数の上限は、事業所における日本人等の常勤介護職員の総数までです。たとえば常勤の日本人介護職員が10人いる施設であれば、最大10人まで受け入れることができます。

Q. 特定技能'介護'から長期就労は可能?

A. 特定技能1号の在留期間は通算5年が上限ですが、在留中に介護福祉士の国家資格を取得すれば在留資格'介護'への変更が可能です。在留資格'介護'には更新回数の上限がなく、家族の帯同も認められるため、実質的に無期限の就労が可能になります。

Q. 訪問介護でも特定技能外国人を受け入れられる?

A. 2025年4月からは訪問介護事業所でも一定の条件のもとで受入れが可能となりました。従来は対象外でしたが、制度改正により受入れの幅が広がっています。

参考文献・出典

  • 出入国在留管理庁「特定技能制度」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/specifiedskilledworker.html
  • 厚生労働省「外国人介護人材受入れの仕組み」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kaigo_koureisha/gaikokujinzai.html
  • 介護労働安定センター「介護労働実態調査」 https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
  • 公益社団法人日本介護福祉士会
  • 公益社団法人国際厚生事業団 (JICWELS)「外国人介護人材受入れ支援」