2024年度介護報酬改定とは:改定率・処遇改善加算の一本化から2027年次期改定の準備まで

この記事でわかること

  • 2024年度介護報酬改定の全体改定率(+1.59%)の内訳と施設種別ごとの影響
  • 処遇改善3加算の一本化で施設が行うべき手続き変更と、採用担当者が見落としやすいポイント
  • 外国人介護士を受け入れている施設が直面する処遇対応のリスクと回避策
  • 2027年度次期改定に向けて今から動ける施設の判断基準とチェックリスト

2024年4月、3年に一度の介護報酬改定が施行されました。全体改定率は+1.59%と「プラス改定」に映ります。しかし施設長・人事担当者が見落としがちなのは、改定率の数字よりも処遇改善加算の一本化という手続きの大転換です。

従来の3つの処遇改善加算が「介護職員等処遇改善加算(Ⅰ〜Ⅳ)」として統合されました。この変更は、外国人介護士を雇用している施設にとっても、加算の対象者管理に直接影響します。処遇改善計画書の記載漏れや、外国人職員を意図せず分配対象外にしてしまうリスクは、監査時の指摘にもつながりかねません。

2027年度の次期改定に向けた議論は2025年末から社会保障審議会介護給付費分科会を中心に始まっており、AI・ロボット活用と人員配置基準の弾力化が主要論点として浮上しています(2026年6月時点)。本記事では2024年改定の要点を整理したうえで、2027年改定への準備を今すぐ行動できる形で提示します。

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2024年度介護報酬改定の全体像:改定率と施設経営への影響

厚生労働省が公表した2024年度(令和6年度)介護報酬改定の全体改定率は+1.59%です( 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」 )。内訳は次の2つから構成されています。

改定率の内訳

ベースアップ等支援分

  • 改定率: +0.98%
  • 目的: 介護職員の月額賃金を平均 6,000 円引き上げるための財源措置
  • 施設への影響: 処遇改善加算の要件を満たさない場合、この部分の報酬増加を受け取れない

その他改定分

  • 改定率: +0.61%
  • 目的: LIFE(科学的介護情報システム)活用推進・生産性向上・テクノロジー導入促進
  • 施設への影響: LIFE データ提出加算・ICT 加速化加算の要件充足で恩恵を受けやすい

この数字だけを見ると「プラス改定で安心」と感じる施設長も多いですが、訪問介護事業所は身体介護中心型・生活援助中心型の基本報酬がそれぞれ引き下げられたという事実は重要です。特養・老健・グループホームなど施設系と訪問系では、改定の恩恵の受け方が根本的に異なります。

改定の主要テーマは3点です。

  • 処遇改善の強化: 賃上げを確実に現場に届ける仕組みへの転換
  • 生産性の向上: テクノロジー・ICT 活用を加算で後押し
  • 医療・介護の連携: 看取り対応や退院時連携加算の拡充

2024年改定が示した方向性を一言で表すなら、「報酬単価の横並び引き上げではなく、質と体制が整った施設を加算で選別する」という設計思想への転換です。施設が何の加算を取得しているかが、収益格差に直結する時代に入っています。

*図解イメージ:2024年度介護報酬改定 - 施設系・訪問系別の影響マップ(ベースアップ支援分 / その他改定分 / 加算取得状況による分岐)*

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処遇改善加算の一本化:採用担当者が見落としやすいポイント

2024年改定で最も実務インパクトが大きかった変更が、処遇改善3加算の統合です。

旧3加算の構成は以下でした。

  • 介護職員処遇改善加算(旧)
  • 介護職員等特定処遇改善加算(旧)
  • 介護職員等ベースアップ等支援加算(旧)

これらが2024年6月1日付で介護職員等処遇改善加算(Ⅰ〜Ⅳ)の4段階体系に統合されました。加算Ⅰが最上位で交付率が最も高く、加算Ⅳが最低要件・低交付率という構造です。移行届出は各都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)へ計画書を提出することで完了します。

施設長・採用担当者が確認すべき3点を整理します。

1. 処遇改善計画書の再提出は自動ではない

旧3加算から新加算への移行は自動ではありません。各都道府県の国保連または介護給付費請求先への計画書提出が必要です。提出期限を見落とした施設は、当該月の加算を受け取れません。届出期限は毎年4月15日(翌月算定開始)または届出月の翌月1日起算が基本ですが、自治体ごとに細則が異なるため必ず確認してください。

2. 賃金改善の分配対象者に外国人介護士が含まれているか再確認する

新加算では「介護職員その他職員」への分配ルールが再整理されました。外国人介護士が在籍する施設では、特定技能介護・在留資格「介護」・技能実習修了後の就労者も分配対象に含まれるかどうかを労務担当者と確認してください。原則として、雇用形態や国籍に関わらず介護職員として就労している者は対象です。外国人介護士を意図せず対象外にしている事例が現場からの相談として複数報告されています。

3. キャリアパス要件の適合状況を確認する

加算Ⅰを取得するには職場環境等要件のほか、キャリアパス要件(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)すべてを満たす必要があります。外国人介護士向けのキャリアパス設計が未整備のまま申請している施設では、要件違反になるリスクがあります。等級制度や資格取得支援の対象に外国人職員が含まれているかを書面で確認してください。

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訪問介護基本報酬引き下げが示す制度の方向性

施設系サービスの多くが恩恵を受けた一方で、訪問介護は身体介護中心型20分以上45分未満の報酬が引き下げられたことが業界に大きな衝撃を与えました。

厚生労働省の分析では「訪問介護事業所の収益率が相対的に高い」ことが引き下げの根拠とされました。しかし現場では2024年以降に訪問介護事業者の倒産・休廃業件数が増加しており、小規模事業所を中心に経営環境の悪化が続いています。

施設長が制度の方向性として理解しておくべき点は3つです。

  • 単独型訪問介護事業所は経営環境が厳しくなる: 法人内で複数サービスを展開している複合型施設は相互補完で対応可能だが、単独型は収益試算の見直しが急務
  • 訪問系の加算率が相対的に下がった施設が出た: 改定前後で手取り収益の試算を更新していない場合、外国人採用コストとの収支が合わなくなるリスクがある
  • 外国人介護士の活用は施設系が主戦場: 特定技能介護は現時点で訪問介護への就労が制限されており、特養・老健・グループホーム・有料老人ホームが外国人材受入れの主軸です(詳細は 特定技能介護の制度概要 を参照)

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外国人介護士と介護報酬改定の接点:受入れ施設が意識すべき処遇対応

介護報酬改定は、外国人介護士を受け入れている施設にとっても直接関係します。

介護業界の人手不足 は深刻で、厚生労働省の推計では2040年に約69万人の介護職員が不足するとされています。こうした背景から特定技能介護の在留者数は増加を続けており、出入国在留管理庁によると2024年末時点で5万人を超えています。

外国人介護士を受け入れている施設が、改定対応の文脈で特に注意すべき3点を解説します。

1. 処遇改善加算の分配計画に外国人職員を適正に含める

処遇改善加算の分配は国籍不問です。在留資格「介護」・特定技能介護・技能実習修了後の就労者も、介護職員として雇用されていれば加算の分配を受ける権利があります。「外国人だから適用が複雑」として対象外にするのは誤りであり、施設にとっては加算の不適正受給リスクにもつながります。処遇改善計画書の「対象職員の範囲」欄に外国人職員の氏名・在留資格・雇用形態を明示してください。

2. 賃上げが定着率に与える影響を可視化する

2024年改定のベースアップ等支援分(+0.98%)は、現場職員の月額賃金を平均6,000円引き上げることを目的としています。外国人介護士にとっても、日本で働き続けることの経済的メリットが可視化されるかどうかは定着判断の重要な要素です。賃上げの内容を入社時オリエンテーションや定期面談で明示し、給与明細に改善分を分かりやすく記載することが定着率向上に直結します。

3. 資格取得支援と加算戦略を連動させる

介護福祉士国家資格を取得した外国人介護士は、在留資格「介護」への変更申請が可能になります。同時に施設は、介護福祉士として就労する職員を処遇改善加算の高い等級に位置づけられます。資格取得支援制度を整備し、外国人介護士のキャリアアップを加算戦略と連動させている施設は、採用競争力・定着率ともに高い傾向があります。外国人介護士の受入れにかかる費用と加算収益のバランスについては、 受入れ費用の内訳 も参照してください。

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受入れ施設の失敗パターンと回避策

介護報酬改定対応の文脈で、現場からの相談に繰り返し登場する失敗パターンを3つ紹介します。

失敗パターン1:処遇改善計画書の更新を後回しにして加算未取得期間が発生

年度更新のタイミングで計画書提出を忘れた、または新加算体系への移行届出が遅れた事例です。国保連への提出期限は厳格で、遅延すると当該月の加算は受け取れません。2024年以降、新体系移行の届出漏れで年間数百万円規模の加算が未回収になった施設もあります。

回避策: 処遇改善計画書の提出スケジュールをカレンダーに登録し、経営管理者が四半期ごとに届出状況を確認するルーティンを設ける。

失敗パターン2:外国人介護士を賃金改善の対象から意図せず外す

「外国人職員は特殊な雇用契約だから対象外」と誤解している管理者がいます。雇用契約書と処遇改善計画書で対象職員の定義が一致していないと、監査時に指摘を受けるリスクがあります。

回避策: 処遇改善計画書の対象職員欄を社会保険労務士・行政書士と一緒に確認し、外国人職員の氏名・在留資格・雇用形態を明示する。

失敗パターン3:改定後の収益試算をしないまま外国人採用コストを見積もる

改定前の単価で処遇改善加算の収益を計算したまま外国人介護士の採用を進め、想定より費用対効果が低かったというケースです。特に訪問介護事業者で報告が増えています。

回避策: 改定後の加算単価と新体系での加算Ⅰ〜Ⅳの取得見込みを試算し直したうえで、1人あたりの採用コスト・月次コストを比較する( 外国人介護士の受入れ全体像 を参照)。

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2027年度改定に向けた施設の準備:今から動ける判断基準

2027年4月に向けた次期介護報酬改定の議論は、2025年末から社会保障審議会介護給付費分科会を中心に進んでいます(2026年6月時点)。現時点で浮上している主要論点と、施設として今すぐ動けるアクションを整理します。

次期改定の主要論点(2026年6月現在)

AI・ロボット・ICT 活用の加算拡充

  • 方向性: 見守りセンサー・移乗支援ロボット・記録システムの ICT 化を進める施設への加算優遇が拡大する見込み
  • 施設への影響: 設備投資の ROI を改定後の加算増収で試算し直す必要がある
  • 準備アクション: 2026〜2027年度の設備投資計画に記録システムの ICT 化を盛り込む

人員配置基準の弾力化(3:1 基準の見直し等)

  • 方向性: テクノロジー活用を前提に、人員配置基準の柔軟化が議論されている
  • 施設への影響: 外国人介護士を含む職員配置計画を改定後の基準で再設計できる可能性がある
  • 準備アクション: 現在の人員配置状況と想定改定後の比較シミュレーションを行う

地域医療・介護の統合強化

  • 方向性: 医療連携加算・退院時連携加算・看取り加算の拡充
  • 施設への影響: 地域の病院・在宅医との連携体制を整えた施設が加算を取りやすくなる
  • 準備アクション: 地域の医療機関との連携プロトコルを文書化する

施設長が今すぐ行動できる優先度別アクション

2026年度中に完了すべきこと

  • 2024年改定での新処遇改善加算の取得状況を確認し、未取得加算の申請を検討する
  • LIFE データ提出を開始・継続する(2027年改定で評価強化の見込み)
  • 外国人介護士を含む全職員の処遇改善計画書への適正登録を完了する

2026〜2027年度に準備すること

  • 記録業務 ICT 化の導入(介護ソフトウェアの更新、タブレット端末の配布)
  • 外国人介護士の介護福祉士資格取得支援の制度化
  • 処遇改善加算Ⅰ取得に必要なキャリアパス制度の文書整備

改定後(2027年4月以降)に対応すること

  • 新体系での加算届出提出(期限をカレンダーに事前登録)
  • 変更内容の職員説明(外国人介護士向けには母国語または図解による説明資料も用意)

最新の審議状況は 厚生労働省「介護報酬の算定構造・各種加算等」 で確認できます。改定の6か月前には答申が出るため、少なくとも2026年末から社会保障審議会介護給付費分科会の動向を月次で注視することをお勧めします。

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実務チェックリスト:2024年改定対応と2027年改定準備

2024年改定対応(未完了があれば早急に対処)

  • 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ〜Ⅳ)の取得状況を確認した
  • 処遇改善計画書の対象職員欄に外国人介護士が含まれているか確認した
  • 加算の賃金改善分配実績報告書を期限内に提出した
  • LIFE へのデータ提出を開始・継続している
  • 訪問介護事業所の場合、基本報酬引き下げ後の収益試算を更新した
  • キャリアパス要件(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)の適合状況を社会保険労務士に確認した

外国人介護士受入れ施設の追加確認事項

  • 特定技能・在留資格「介護」職員の処遇が日本人同水準であることを書面で確認した
  • 賃上げの内容を外国人職員に母国語または図解で説明した
  • 介護福祉士資格取得支援の対象に外国人介護士が含まれている
  • 処遇改善加算の賃金改善分が給与明細に明示されている

2027年改定準備(2026年度中に着手)

  • LIFE 活用加算の算定開始・強化を検討した
  • 記録システムの ICT 化計画を策定した
  • 厚生労働省の介護給付費分科会資料を定期的に確認する体制を整えた
  • 外国人介護士を含む職員のキャリアパス制度を文書化した

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よくある相談

Q. 2024年改定で処遇改善加算が一本化されましたが、移行手続きは自動ですか?

いいえ、自動移行ではありません。各都道府県の国保連に対して新加算体系での処遇改善計画書を提出する必要があります。移行届出の期限を過ぎると当該月の加算が受け取れません。まず都道府県の介護保険担当窓口または国保連に届出期限と必要書類を確認してください。

Q. 外国人介護士は処遇改善加算の分配対象に含めなくてよいですか?

含める必要があります。処遇改善加算は在留資格や国籍に関わらず、介護職員として雇用されているすべての職員を対象とします。外国人介護士を対象外にすることは加算の不適正受給とみなされる可能性があります。処遇改善計画書の「対象職員の範囲」欄を社会保険労務士と確認してください。

Q. 2027年改定でどのような変化が起きますか?

2026年6月時点では、AI やロボット活用推進・人員配置基準の弾力化・医療介護連携の強化が主要論点として議論されています。少なくとも2026年末から答申の動向を確認し、自施設の設備投資計画・人員計画に反映させることをお勧めします。

Q. 特定技能介護の受入れは2027年改定後も継続できますか?

制度廃止の議論は現時点ではありません。ただし、人員配置基準の見直しや在留要件の変更が連動する可能性はゼロではありません。特定技能介護の制度最新情報は 特定技能介護の制度概要 と出入国在留管理庁の公式発表を定期的に確認することをお勧めします。

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外国人介護士の受入れを検討中ですか?

「2024年改定で処遇改善加算の要件が変わったが、外国人介護士を採用しても問題ないか確認したい」「2027年改定を前に、外国人材受入れを始めるタイミングを相談したい」,, そのようなご相談をいただきます。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、特定技能介護・在留資格「介護」の人材紹介を行っています。17万人超の在日外国人データベースから貴施設に合う人材をご紹介します。初期費用・運用費用は0円〜、内定時のみ費用が発生する完全成功報酬型です。

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参考資料

ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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