介護人材確保等支援助成金とは?コース別の要件・申請手順を施設長向けに解説

この記事でわかること:

  • 介護人材確保等支援助成金の主要コースとそれぞれの支給要件・助成額の目安
  • 計画申請から支給通知までの実務ステップと書類管理のポイント
  • 申請で施設がつまずく失敗パターン4つと、採用担当が見落としやすい制度の落とし穴

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介護人手不足が深刻化するいま、雇用関係助成金を知らないと損をする理由

厚生労働省の推計では、2040年には介護職員が約69万人不足するとされています。採用競争は年々激しくなっており、国内の日本人労働者だけを採用ターゲットにしている施設では、定員充足どころか現状維持すら困難になるケースが増えています。

こうした状況に対して国が用意している公的支援の一つが、介護人材確保等支援助成金です。厚生労働省が所管する雇用関係助成金の一種で、介護施設の職場環境整備・処遇改善・採用力強化を支援することを目的としています。

しかし、ユアブライト株式会社が施設長・人事担当者へのヒアリングを通じて繰り返し聞くのが「制度があることは知っているが、自施設が対象かどうか判断できていない」「申請が複雑そうで後回しにしている」という声です。実際に申請・受給まで至っている施設は、要件を満たす施設全体と比べて少数にとどまっているのが実態です。

介護人手不足への対策として 介護業界の人手不足とその構造的背景 を理解することは重要ですが、それと並行して活用できる公的支援を把握しておくことも、施設の経営判断として欠かせません。

この記事では、介護人材確保等支援助成金の各コースの概要・要件・申請の実務を、施設長・採用担当者が実際に行動できるレベルで整理します。なお、本記事の内容は2026年5月時点の情報をもとにしています。助成額や要件は毎年度見直されるため、申請前には必ず都道府県労働局またはハローワークで最新情報を確認してください。

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介護人材確保等支援助成金の主要コースと支給内容

介護人材確保等支援助成金は、目的の異なる複数のコースで構成されています。施設のフェーズや課題に応じて活用できるコースを選択します。

介護福祉機器助成コース

介護職員の身体的負担を軽減するための機器を導入・更新する事業主を支援するコースです。介護ロボット、移乗支援機器、見守りセンサー、入浴補助機器などが対象機器の例として挙げられています。身体的負担の軽減が定着率の改善につながるという考え方が制度の根拠にあります。

主な対象事業主

  • 介護保険サービスを提供する雇用保険適用事業所であること
  • 雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受けた事業主
  • 計画期間終了後に、計画申請時点で設定した離職率目標を達成した事業主

助成率・上限額の目安(中小企業の場合)

  • 機器導入費用: 費用の1/2を助成、年間上限500万円
  • 機器更新費用: 費用の1/2を助成、年間上限150万円

大企業は助成率が1/3となるため、自施設の区分(常用被保険者数で判断)を事前に確認してください。

このコースで最も重要なのは「離職率目標の達成」という条件です。機器を導入するだけで離職率が自然に改善するわけではなく、業務フローの見直しや職員への使い方の周知が伴わなければ効果は出ません。計画を立てる段階で、導入後の運用改善まで含めた設計が必要です。

介護職員処遇改善支援コース

介護職員の基本給を引き上げる取り組みを行った事業主を支援するコースです。介護保険制度上の「介護職員等処遇改善加算」とは別の制度であることに注意が必要です(詳しくは後述のFAQを参照)。

主な要件

  • 就業規則または賃金規程に基づく基本給の引き上げを計画前に設定していること
  • 引き上げ後の基本給が、対象者が勤務する都道府県の最低賃金を上回ること
  • 対象は雇用保険の被保険者である介護職員

支給額の考え方

引き上げた基本給の額・対象人数に応じて支給額が算定されます。1人当たりの上限額は年度ごとに厚生労働省が告示で定めており、最新の告示額は都道府県労働局またはハローワークで確認が必要です。

処遇改善 の取り組みとして賃上げを検討している施設は、このコースを計画的に活用することで、助成金を通じて実質的なコスト負担を軽減しながら職員定着を図ることができます。

その他関連コース・プログラム

上記2コースのほかに、雇用管理制度の整備(メンター制度・評価制度の導入等)を支援するコースや、人材開発支援助成金との組み合わせが有効なケースもあります。自施設の課題がどのコースに対応するかは、都道府県労働局の窓口または社会保険労務士への相談を通じて確認することを推奨します。

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申請の実務ステップ:計画申請から支給まで

図解:介護人材確保等支援助成金の申請フロー

[1] 事前準備[2] 計画申請(労働局へ提出)[3] 施策の実施(機器導入・賃上げ等)[4] 支給申請(計画期間終了後)[5] 審査・支給通知

ステップ1:事前準備(申請前)

まず、自施設が各コースの対象事業者に該当するか確認します。雇用保険の適用事業所であること、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が基本要件です。

就業規則・賃金規程が労働基準監督署に届け出されており、内容が現在の労働条件の実態と一致していることを必ず確認してください。就業規則が未整備の施設や、賃金規程と実態が乖離している施設は、計画申請の前に整備が必要です。この段階で助成金申請の実績が豊富な社会保険労務士(社労士)に相談するケースが多く、スムーズな申請に有効です。

ステップ2:計画申請(事前申請・最重要)

雇用管理改善計画または賃金引き上げ計画を作成し、都道府県労働局またはハローワークに提出します。この計画申請を施策の実施前に完了していることが支給要件です。 機器を購入してから遡って計画申請することはできません。順番の誤りが最も多い失敗原因であるため、必ず「計画認定通知を受けてから発注・購入」の順番を守ってください。

計画申請書に記載する主な内容:

  1. 事業所の基本情報と雇用保険適用事業所番号
  2. 申請するコースと実施する取り組みの内容
  3. 計画期間(開始日・終了日)
  4. 離職率の現状値と目標値(介護福祉機器助成コースの場合)

ステップ3:施策の実施

計画認定後、計画書の内容に沿って施策を実施します。機器導入コースであれば対象機器の購入またはリース契約を行い、処遇改善コースであれば賃金規程を改定して実際の引き上げを実施します。実施期間中は証拠書類(領収書・給与明細・出勤簿・雇用保険被保険者証等)を整理して保管します。

ステップ4:支給申請

計画期間が終了したら、所定の期限内に支給申請を行います。支給申請の期限は計画期間終了後おおむね2か月以内が一般的ですが、コースや年度によって異なります。労働局からのリマインドはありません。 計画期間の終了日と支給申請期限を、計画認定の段階でカレンダーに登録しておくことが不可欠です。

支給申請に必要な主な書類:

  • 支給申請書(所定様式)
  • 賃金台帳・出勤簿(計画期間分)
  • 機器購入の領収書またはリース契約書(機器コースの場合)
  • 離職率の算出根拠となる雇用保険被保険者記録
  • 就業規則・賃金規程(最新版)

ステップ5:審査・支給通知

都道府県労働局による審査の後、支給または不支給が書面で通知されます。審査には通常2か月から4か月程度かかります。不支給の場合も理由が通知されるため、原因を確認した上で再整備・再申請につなげることができます。

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受入れ施設の失敗パターンと回避策

介護人材確保等支援助成金の申請で繰り返し見られる失敗パターンを、施設側の実態をもとに整理します。

失敗パターン1:計画申請前に機器を購入してしまう

最も多い失敗です。「先に機器を買って、後から申請書を出せばよい」という誤解から発生します。介護福祉機器助成コースでは、雇用管理改善計画の認定通知を受け取る前に取得した機器は助成の対象外となります。

回避策: 機器の選定・見積もりは計画申請前に行ってよいですが、発注日・納品日が計画認定通知書の受領日より後になるよう徹底します。認定通知書は原本を施設で保管し、発注書類と日付が一致しているか申請前に必ず確認します。

失敗パターン2:就業規則・賃金規程と実態が乖離している

書面上の就業規則が数年間更新されていない、あるいは実際の賃金体系と規程の内容が一致していないケースが審査で指摘されます。特に処遇改善支援コースでは、規程と実態の整合性が厳しく確認されます。

回避策: 計画申請の少なくとも3か月前を目安に、就業規則・賃金規程の現状と実態を照らし合わせます。改定が必要な場合は社労士に依頼し、改定後は速やかに労働基準監督署に届け出ます。

失敗パターン3:離職率目標の設定が達成困難な水準になっている

介護福祉機器助成コースは、計画終了後に設定した離職率目標を達成していることが支給要件です。「機器を入れれば自然に改善するはずだ」という楽観的な目標を設定すると、未達で支給されないリスクがあります。

回避策: 計画申請前に過去2〜3年の離職率実績データを集計し、現実的に達成可能な目標値を設定します。離職率の計算方法(計画期間中に離職した人数を期間内の平均被保険者数で除した値)を事前に正確に理解しておくことが必要です。

失敗パターン4:申請書類の散逸・保管ミス

審査期間が数か月に及ぶため、その間に書類が紛失するケースがあります。紙での管理が中心の施設では特に発生しやすく、計画認定通知書・領収書・タイムシートが見当たらないという事態に陥ることがあります。

回避策: 助成金申請専用のバインダー(紙)またはフォルダー(デジタル)を申請ごとに作成し、書類の種類・日付・担当者を記録したインデックスを添付します。書類の複数部保管とスキャンによるデジタル化を組み合わせることを推奨します。

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採用担当者が見落としやすいポイント

他の雇用関係助成金との併給制限

介護人材確保等支援助成金は、他の雇用関係助成金と重複して受給できない組み合わせがあります。たとえば、特定求職者雇用開発助成金(特開金)の受給対象となっている職員について、同一の雇用期間において別の助成金を重ねて申請できない場合があります。

複数の助成金を同時に申請・受給中の施設、または外国人介護士の採用に関連する助成金と組み合わせる場合は、必ず都道府県労働局に事前に確認してください。

外国人介護士の採用との関係

特定技能「介護」や在留資格「介護」で就労している外国人介護士は、雇用保険の被保険者となる在留資格を有しているため、原則として日本人労働者と同様の扱いで各コースの対象労働者に含めることができます。

一方、技能実習「介護」の場合は制度の性格上、扱いが異なる可能性があります。外国人介護士の採用と雇用関係助成金の活用を組み合わせる場合は、採用前に都道府県労働局へ確認することを強く推奨します。

外国人介護士の 受入れの全体像と現場で起きていること については別記事で詳しく解説しています。また 特定技能「介護」の制度概要 も合わせてご確認ください。

申請コストと費用対効果の事前試算

社労士への依頼費用は、受給額の10〜20%程度が一般的な相場です。助成金額が少額のコースでは、申請コストを差し引いた実質的な便益が小さくなる場合もあります。事前に助成見込み額と申請コストを試算した上で、申請の優先順位を判断することが経営上の合理的な判断です。

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実務チェックリスト:計画申請前に確認すべき8項目

施設長・採用担当者が計画申請の前に確認しておくべき事項をまとめました。

1. 雇用保険の適用事業所であることの確認

  • 雇用保険の適用事業所番号を把握しているか

2. 社会保険(健康保険・厚生年金)の加入状況の確認

  • 対象職員が適切に社会保険に加入しているか

3. 就業規則・賃金規程の最新化

  • 最新版が労働基準監督署に届け出されているか
  • 内容が現在の労働条件の実態と一致しているか

4. 過去の不正受給歴の確認

  • 過去3年以内に雇用関係助成金の不正受給歴がないか(不正受給歴があると申請不可)

5. 申請コースの対象要件との照合

  • 自施設の規模・業種・直近の離職率が各コースの要件を満たしているか

6. 他の助成金との併給制限の確認

  • 現在受給中・申請中の助成金との重複制限がないか

7. スケジュールのカレンダー登録

  • 計画期間の開始日・終了日・支給申請期限をカレンダーに入力したか

8. 担当社労士または都道府県労働局への事前相談

  • 不明点を申請前に解消しているか

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よくある質問

Q. 小規模な施設でも介護人材確保等支援助成金に申請できますか?

はい、申請できます。雇用保険の適用事業所であれば施設規模を問わず申請の対象となります。ただし助成率や上限額が「中小企業」と「大企業」で異なるコースがあるため、常用被保険者数にもとづく自施設の区分を事前に確認してください。

Q. 計画申請から支給まで、どのくらいの期間を見ればよいですか?

コースや計画期間の設定によって異なりますが、計画申請から支給通知まで最短でも6か月から1年程度はかかると見込んでください。初めての申請では書類不備による往復確認が発生するケースも多く、余裕を持ったスケジュール設定が重要です。

Q. 介護職員等処遇改善加算と介護人材確保等支援助成金の処遇改善支援コースは別物ですか?

はい、別制度です。介護職員等処遇改善加算は介護保険制度上の報酬加算であり、各サービスの介護報酬に上乗せされる形で事業者に交付されます。一方、介護人材確保等支援助成金の処遇改善支援コースは厚生労働省所管の雇用関係助成金で、都道府県労働局・ハローワークに申請します。両者は独立した制度であり、要件を満たせば並行して活用することが可能です。

Q. 外国人介護士を採用する際に使える助成金は他にありますか?

外国人介護士の採用時に活用できる可能性がある助成金として、特定求職者雇用開発助成金があります。また、都道府県や市区町村が独自の補助金を設けている場合もあります。外国人介護士の採用にかかるコスト全体については、 受入れ費用の内訳 の記事も参考にしてください。

Q. 申請書類の作成は自社でできますか?

要件確認・書類収集・記入は施設の担当者が自力で対応することも可能です。ただし、就業規則の確認や賃金引き上げ計画の策定が絡む場合は、社会保険労務士に依頼するのが一般的な選択です。申請の経験が豊富な社労士を選ぶことで、書類不備や要件誤解による不支給リスクを大幅に下げることができます。

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外国人介護士の採用と助成金の活用を組み合わせた人材戦略

介護人材確保等支援助成金を通じた職場環境整備は、採用力の向上にも間接的に寄与します。しかし、助成金活用だけで介護人手不足への対策として十分とはいえません。国内の採用競争がこれほど激化している中で、外国人介護士の採用を並行して検討する施設が増えています。

出入国在留管理庁のデータによれば、特定技能「介護」の在留者数は2025年時点で5万人を超えています。即戦力として現場に加わる外国人介護士の存在は、もはや選択肢の一つではなく、多くの施設にとって現実的な主力採用経路になりつつあります。介護福祉機器助成コースで物理的な業務負担を軽減しながら、外国人介護士を新たな戦力として迎える二段構えの人材戦略が、離職率を下げる上でも効果的なアプローチです。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、特定技能「介護」・在留資格「介護」・技能実習修了者などの外国人介護士の人材紹介を行っています。17万人超の在日外国人データベースから貴施設に合う人材をご提案します。初期費用・運用費用は0円〜、内定時のみ費用が発生する完全成功報酬型です。

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参考情報

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*本記事の内容は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。助成金の要件・支給額・申請様式は毎年度見直されます。申請にあたっては、必ず都道府県労働局またはハローワークで最新情報をご確認ください。*

ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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