介護採用コストの適正値とは?全国平均・費用内訳・判断基準を施設長向けに解説

この記事でわかること:

  • 介護職員1人あたりの採用コスト全国平均と採用経路別の費用目安
  • 「見えないコスト」を含めた適正値の計算方法と判断基準
  • 外国人介護士採用との費用比較と、施設長が今すぐ使える実務チェックリスト

「採用コストが高いのか安いのか、そもそも適正値がわからない」という相談は、介護施設の施設長・採用担当者から非常に多く寄せられます。求人媒体費や紹介手数料の請求書を見て「こんなに払っているのか」と感じながらも、比較基準がないまま毎年同じチャネルを使い続けている施設は少なくありません。

本記事では、 介護業界の人手不足 が深刻化する中、採用コストの適正値を正しく把握し、費用対効果の高い採用判断を下すための具体的な判断軸を解説します。

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介護施設の採用コスト、全国平均は1人あたりいくらか

公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」によると、介護職員1人を採用するための平均費用は概ね50〜60万円とされています。ただし、この数字は採用経路・職種・地域によって大きく異なります。介護福祉士やケアマネジャーなど有資格者の場合、100万円を超える事例も珍しくありません。

採用経路別の費用感を把握することが、適正値判断の第一歩です。

採用経路別の費用目安

ハローワーク・自社採用(求人票・紹介カード)

  • 費用目安: 10〜20万円(求人票作成・採用担当者の工数が中心)
  • 特徴: 媒体費はほぼゼロだが、採用担当者の対応工数が多く発生する
  • 向く施設: 採用担当者が充実しており、時間をかけて選考できる施設

求人媒体(Indeed・介護専門サイト・求人ボックスなど)

  • 費用目安: 30〜80万円(掲載費+成果報酬型の場合は採用成功時に追加)
  • 特徴: 応募母数を広げやすいが、選考・対応工数も増える
  • 向く施設: 常時採用ニーズがある中〜大規模施設

人材紹介会社

  • 費用目安: 採用者の年収の20〜35%(介護福祉士であれば60〜120万円程度)
  • 特徴: 即戦力候補の紹介を受けられるが、1採用あたりのコストは高くなる
  • 向く施設: 有資格者や特定スキルを持つ人材を急ぎで補充したい施設

厚生労働省「令和4年度 介護事業経営実態調査」では、事業所規模が小さいほど採用1件あたりのコストが相対的に高くなる傾向が確認されています。小規模施設では採用規模の効率が出にくく、大規模施設との交渉力の差も採用単価に影響します。

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採用コストの全内訳と「見えないコスト」の正体

介護施設の採用担当者が最も見落としやすいのは、求人媒体費や紹介手数料といった「直接コスト」だけを採用コストとして管理していることです。適正値を正しく判断するには、直接コストと間接コストをあわせて把握する必要があります。

直接コスト(把握しやすい費用)

  • 求人広告・掲載費
  • 人材紹介会社への紹介手数料
  • 採用代行(RPO)サービス費
  • 面接・適性検査ツールの利用費
  • 採用管理システム(ATS)のサブスクリプション費

間接コスト(見えにくい費用)

多くの施設で「採用コスト」として計上されていないにもかかわらず、実態として採用総コストの30〜50%を占めるケースがあります。

  • 採用担当者の人件費: 書類選考・面接調整・内定後フォローにかかる時間の時給換算。採用担当者が月に10〜20時間を採用業務に充てている施設は珍しくありません。
  • 現場スタッフ・管理職の面接対応工数: 施設長・主任クラスが面接に立ち会う場合、その時間も採用コストとして見積もるべきです。
  • 入社後のオンボーディングコスト: 先輩スタッフや主任が新人教育に充てる時間と、その間の現場生産性の低下分。
  • 早期離職による再採用コスト: 入社6か月以内の離職は採用コストをまるごと無駄にします。厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」によれば、介護・医療・福祉分野の入職後1年以内の離職率は約20%に達しており、再採用サイクルが短い施設ほど採用総コストが膨らむ構造にあります。

図解イメージ: 採用コスト全体像(直接コスト+間接コスト)

採用予算の見直しを行う際は、上記を「直接コスト層」と「間接コスト層」の2層構造で可視化することを推奨します。採用担当者が算出した採用単価と、間接コストを加えた実態単価を並べると、多くの場合で1.3〜2倍のギャップが生じます。

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採用コスト適正値の計算方法と判断基準

「適正値」は業界平均と比較するだけでは判断できません。施設ごとの採用難易度・離職率・求めるスキルセットによって、投資水準の適正値は変わります。以下の3つの判断基準を組み合わせることを推奨します。

判断基準1:採用単価の実態値を計算する

まず貴施設の採用コスト実態値を把握します。

計算式: 採用1件あたりコスト = (直接コスト合計 + 間接コスト合計) ÷ 実際に入社した件数

「内定承諾数」ではなく「入社した件数」で割ることがポイントです。採用プロセスで辞退・不合格になった候補者への対応コストも分子に含めます。

判断基準2:採用コスト回収期間で考える

採用コストを「投資」として捉えると、回収期間が判断軸になります。採用コストが100万円の場合、その職員が担うシフト充足・サービス品質維持によって、何か月以内にコストを回収できるかを試算します。一般的には1〜2年以内に回収できる採用コストが「適正」とされています。

早期離職リスクが高い採用経路では、費用が高めでも定着率保証のある人材紹介を選ぶ判断が、長期的には合理的です。

判断基準3:離職コストとの比較

採用コストの適正値は、「離職した場合に発生するコスト」と比較することで見えやすくなります。介護職員1人が離職した場合のトータルコスト(再採用費・引き継ぎコスト・既存スタッフへの負担増・サービス品質低下リスク)は、採用コストの1.5〜2倍に達するとも言われています。定着率の高い採用経路に多少高いコストをかける選択は、経営的合理性があります。

職種別の採用単価目安(施設長の予算設定の参考値)

  • ケアワーカー(無資格・初任者研修修了者): 目安上限30〜40万円/人
  • 介護福祉士: 目安上限60〜100万円/人
  • ケアマネジャー・看護師などの専門職: 目安上限100〜150万円/人

この水準を大きく超える採用チャネルは、採用難易度が特別に高い局面でなければ見直し対象とすることが、コスト適正化の出発点です。

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介護現場でよくある相談

「求人を出しても応募がなく、結局高コストの紹介会社に頼ってしまう」

この相談は施設長から最も多く寄せられるものの一つです。ハローワークや求人媒体で反応がなく、締め切り前に人材紹介会社に頼ることで採用単価が跳ね上がる、というサイクルに陥っている施設は多くあります。

根本的な原因は「どの採用経路を使うか」ではなく、「採用活動の開始タイミングが遅い」ことにある場合がほとんどです。欠員が出てから採用活動を始めると、時間的プレッシャーから高コストのチャネルへ流れがちになります。補充計画を3〜6か月先行して立てることで、低コストの採用経路を主軸に使えるようになります。

「紹介手数料を払ったのに3か月で辞めてしまった」

人材紹介会社への手数料には多くの場合「返金保証期間」(通常入社後2〜3か月)が設けられていますが、保証条件(施設都合の退職は返金対象外、など)を見落として泣き寝入りする施設も見受けられます。契約前に保証の適用条件を細かく確認することが必須です。

また、3か月以内の早期離職は「採用ミスマッチ」だけが原因ではなく、「受入れ後の定着支援不足」による場合も多くあります。採用コストを真の意味で下げるには、採用段階と同等以上に、入社後6か月のフォローアップ体制を整えることが重要です。

「採用コストを見える化したいが、どこから始めればよいか」

まず過去12か月の採用活動にかかった直接費(求人媒体費・紹介手数料)を経理データから集計します。次に、採用担当者・面接対応スタッフの工数を時給換算して間接費を推計します。採用件数で割ることで採用単価の実態値が把握できます。多くの施設でこの作業をすると「想定の1.5倍以上の採用単価」が判明します。

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受入れ施設の失敗パターンと回避策

失敗パターン1:採用チャネルを比較せずに惰性で使い続ける

「ずっとこの媒体を使っているから」という理由で費用対効果を検証しないまま特定の採用チャネルに依存し続ける施設は多くあります。採用単価が業界水準の1.5〜2倍になっていても気づかないケースがあります。

回避策: 少なくとも年1回、採用チャネルごとの採用単価・定着率・スキルマッチ率を集計し、比較検討を施設の慣行にする。

失敗パターン2:採用コスト予算を「年度予算」で硬直的に管理する

年間採用予算を固定してしまうと、年度後半に予算が枯渇して採用活動が止まり、人員不足が続く事態になりがちです。

回避策: 採用コスト予算は「採用件数 × 採用単価の目標値」で設定し、件数変動に対してフレキシブルに対応できる枠組みを作る。

失敗パターン3:採用コストと定着コストを別々の課題として扱う

採用に成功しても、早期離職すれば採用コストはゼロになります。入社後の研修・OJT・メンター制度への投資を「採用コストの一部」として捉えることで、定着施策への投資判断が変わります。

回避策: 採用予算の10〜20%を「定着支援投資」として別枠確保し、入社後6か月のフォローアップ体制を標準化する。

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外国人介護士の採用コストは日本人採用とどう違うか

介護業界での外国人介護士の受入れ を検討する施設が増えています。出入国在留管理庁の統計によれば、特定技能「介護」の在留者数は2025年10月末時点で約55,700人に達しており、前年比で約1.4倍の伸びを見せています。

外国人介護士の採用コストは、日本人採用と構造が異なります。 特定技能介護の費用内訳 を把握したうえで、日本人採用との比較判断を行うことが重要です。

在日外国人介護士の採用コスト構造

人材紹介手数料

  • 費用目安: 年収の20〜30%(または固定額40〜80万円程度)
  • 特徴: 日本人採用の紹介手数料とほぼ同水準。在日人材であれば渡航費・入国手続きが不要なため、海外在住の候補者より初期コストが抑えられる

在留資格変更申請費(行政書士委託)

  • 費用目安: 5〜15万円/人
  • 特徴: 特定技能への資格変更や更新が必要な場合に発生。在留資格「介護」(介護福祉士国家資格保有者)の場合は申請が比較的シンプル

登録支援機関への委託費(特定技能1号の場合)

  • 費用目安: 1.5〜3万円/人/月(年間18〜36万円)
  • 特徴: 特定技能1号の受入れには登録支援機関への支援委託が原則義務づけられている。採用初年度から継続的にかかるランニングコストとして見込む必要がある

受入れ準備・研修費

  • 費用目安: 5〜20万円/人(初年度のみ)
  • 特徴: 言語サポート・OJTマニュアルの多言語対応・文化理解研修など

初年度の総コストは、登録支援機関費や研修費の分だけ日本人採用より1〜1.5割高くなるケースが多いです。一方、ともにケアを運営するユアブライト株式会社のデータでは、在日外国人介護士の1年後定着率は80%超と良好な水準にあり、再採用頻度の低さを考慮すると2年目以降のコスト優位性が生まれやすい傾向があります。 特定技能「介護」制度の詳細 も参照してください。

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採用担当者が見落としやすいポイント

ポイント1:採用単価の計算に「選考途中の離脱者対応コスト」を含めていない

書類選考・面接で辞退・不合格になった候補者への対応コスト(工数・適性検査費など)を計算に含めないと、採用単価が実態より低く出ます。正確な採用単価は「かかったコスト合計 ÷ 実際に入社した人数」で算出します。

ポイント2:「採用コスト削減」が採用品質を下げる悪循環

コスト削減を急ぐあまり書類選考基準を緩めたり面接回数を減らしたりすると、ミスマッチ採用が増えて離職率が上昇します。コスト削減と採用品質の両立には、採用プロセスの効率化(採用管理システムの導入・面接の構造化)が有効です。

ポイント3:採用担当者のKPIが「入社数」で止まっている

採用担当者の評価指標が「内定承諾数」や「入社数」に設定されている場合、入社後の定着は別部署の課題として扱われがちです。採用コストの適正値を本質的に議論するには、「1年後定着率」まで採用担当者の評価指標に含めることが必要です。

ポイント4:季節変動を考慮した採用計画になっていない

介護業界では年度変わりの3〜4月と夏季の離職が多く、採用競争が激化する時期に重なることで採用単価が上昇しやすい傾向があります。採用活動を競合が集中するピーク期から外すだけで、同じ採用チャネルでも単価が2〜3割下がるケースがあります。

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施設長のための実務チェックリスト

採用コスト適正化に向けて、すぐ取り組める確認項目をまとめました。

採用コストの現状把握

  • 過去12か月の採用チャネル別の直接費(求人媒体費・紹介手数料)を集計した
  • 採用担当者・面接対応者の工数を時給換算して間接費を推計した
  • 採用件数で割り、採用単価(総額・実態値)を計算した
  • 採用チャネル別の採用単価・定着率を比較した

適正値の設定と予算管理

  • 職種別の採用単価上限(ケアワーカー・介護福祉士・ケアマネなど)を設定した
  • 採用コスト予算を「採用件数 × 単価目標」でフレキシブルに設計している
  • 定着支援コストを採用予算の10〜20%として別枠で確保している

採用チャネルの見直し

  • 採用チャネル別の費用対効果を年1回以上比較している
  • 採用活動を欠員発生より3〜6か月先行して開始するルールを設けている
  • 外国人介護士(特定技能・在留資格「介護」)採用を選択肢として試算した

契約・保証の確認

  • 人材紹介会社との契約で「保証期間の条件・適用除外」を確認している
  • 登録支援機関費(外国人採用の場合)を年間コストに含めて試算している
  • 採用担当者のKPIに「1年後定着率」を含めることを検討している

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よくある質問

Q. 介護職員の採用コスト適正値の目安を教えてください。

職種によって異なりますが、ケアワーカー(初任者研修修了者・無資格)で30〜50万円、介護福祉士で60〜100万円、ケアマネジャーで80〜150万円が業界でよく参照される目安です。ただしこれはあくまで相場感であり、貴施設の採用難易度・地域・採用経路によって変わります。重要なのは自施設の実態値を計算したうえで業界平均と比較することです。

Q. 採用コストを下げるために最も効果的な方法は何ですか?

短期的には「採用活動の前倒し」と「採用チャネルの分散(1媒体依存からの脱却)」が効果的です。中長期的には「定着率の改善」が採用コスト削減に最も大きく寄与します。定着率が上がれば再採用頻度が下がり、年間の採用総コストが自然に下がります。採用予算の一部を定着支援に振り向けることを検討してください。

Q. 外国人介護士の採用は日本人採用よりコストが高いですか?

初年度の総コストは、登録支援機関費や研修費の分だけ日本人採用より1〜1.5割高くなるケースが多いです。しかし定着率が良好な場合、2年目以降はコスト優位性が生まれやすい傾向があります。また、慢性的な人手不足で欠員が続いている施設では、採用機会損失(利用者受入れ制限・既存スタッフの超過労働コスト)を考えると、外国人介護士採用の総コストは十分に合理的な投資です。

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外国人介護士の採用を検討中ですか?

「採用コストを適正化したい」「定着率の高い人材を紹介してほしい」というご相談を施設長・採用担当者から多くいただいています。ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、17万人超の在日外国人データベースから貴施設に合う介護人材をご紹介しています。特定技能「介護」・在留資格「介護」(介護福祉士)・技能実習修了者など、来日済みの即戦力人材が中心です。

紹介手数料は完全成功報酬型で、初期費用・運用費用は0円から。内定が出るまで費用は一切発生しません。

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参考文献

ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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