介護施設の人材難 解決策ガイド|採用・定着・外国人介護士活用の実務判断

この記事でわかること:

  • 介護施設の人材難がなぜ採用強化だけでは解消しないのか(厚労省データをもとに整理)
  • 採用担当者が見落としやすい「定着コスト」の実態と、解決策の優先順位のつけ方
  • 外国人介護士の受入れを判断するための具体的な基準と、受入れ施設が陥りやすい失敗パターン

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全国の介護施設で深刻化している人材難。「採用費を増やせば解決できる」は、残念ながら間違いです。厚生労働省「第9期介護保険事業計画の基本指針」では、2040年度には介護職員が約69万人不足すると試算されています。この数字は生産年齢人口の構造的な縮小を背景にしており、国内の採用市場だけに頼り続けるアプローチには限界があります。

もう一つの数字があります。介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」によると、介護職員の年間離職率は14.4%です。採用と離職が同時進行する「回転ドア状態」が常態化している施設では、採用費を投下しても人手不足の体感が変わらない事態が続きます。

施設長・人事担当者が最初に問うべきことは明確です。「貴施設の人材難は採用問題か、定着問題か、それとも両方か」。この切り分けを誤ると、解決策が的外れになります。本記事では、その判断材料と実務上の優先順位を整理します。

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介護施設の人材難はなぜ採用強化だけでは解決できないのか

シンプルな事実から始めましょう。介護人材市場は「売り手市場」です。

厚生労働省「職業安定業務統計」によると、介護関連職種の有効求人倍率は全職種平均の2倍以上で推移しています。求職者が施設を選ぶ競争環境が続いており、「募集をかければ集まる」という前提はもはや成立しません。採用チャネルに予算を投下しても応募数が改善しない施設では、求人訴求内容そのもの、あるいは職場環境の実態に問題がある可能性があります。

もう一つの重要な指標が、離職者の属性です。介護労働安定センターの調査では、離職理由の上位に「職場の人間関係」「身体的・精神的な負担が大きい」「賃金への不満」が挙がっています。これらは採用費では解決できません。根本的な問題が別のところにあるわけです。

介護業界の人手不足の構造と今後の見通しについて詳しく解説した記事 もあわせてご確認ください。

施設として最初に確認すべき3点:

  • 直近12か月の離職率(業界平均14.4%との比較)
  • 離職者のキャリア年数の分布(入職3か月以内・1年以内・3年超に分けて把握)
  • 主な離職理由のカテゴリ別集計(退職面談で取得しているか)

これらのデータがない施設は、まず現状把握から着手することが先決です。「何が問題か」が数字で見えていない状態では、解決策の選択ができません。投資先を誤るリスクが高まります。

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採用担当者が見落としやすいポイント:定着コストの実態

採用コストは請求書として可視化されます。しかし定着コストは請求書として届きません。

介護職員一人の採用・育成にかかる総コスト(求人広告費・紹介手数料・在留資格申請費・OJT期間中の指導工数・夜勤調整コスト)は、施設の規模や採用経路によって異なります。ただ、入職後1年以内に離職した場合、そのコストは回収されずに消えます。これが「回転ドア」の本当のコストです。

見落とされやすいコスト項目:

  • OJT担当者の業務負担: 指導担当リーダーが通常業務を削ってOJTを担う時間コスト
  • 夜勤の集中: 人員欠損時に残存スタッフへ夜勤負担が偏ることによる連鎖離職リスク
  • サービス品質の一時低下: 不慣れな職員の増加による利用者・家族対応への影響
  • 管理職の採用業務負担: 施設長・主任が面接・書類選考・内定調整に費やす時間

「採用費を追加しても人手不足が解消しない」施設に共通するのは、この離職コストが定量化されていないことです。まず「採用コスト」と「定着コスト」を分けて把握する。それが、有効な解決策を選ぶ出発点です。

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介護施設 人材難 解決策の全体像:短期・中期・長期の時間軸で整理する

人材難対策は時間軸別に整理することで、リソースの分散を防ぎ優先順位をつけやすくなります。すべてを同時に動かすことは難しい。施設の現状フェーズに応じて、何を先に動かすかを選択してください。

短期(3か月以内に効果が出やすい施策)

求人チャネルの見直しと訴求内容の改善

求人媒体への掲載だけで応募が集まる時代は終わっています。「出し続けているが応募が来ない」状態が3か月以上続いているなら、チャネルを変えるか、訴求内容を根本から見直す必要があります。

確認すべき数字:

  • 月次の応募数・書類通過率・内定辞退率
  • 求職者がどの経路で施設を知ったか
  • 同地域・同規模施設の求人との処遇比較

処遇改善加算の取得区分と可視化

2024年度介護報酬改定で再編された「介護職員等処遇改善加算」は、職場環境要件を満たすことで取得できる加算です( 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算について」 )。

確認すべき点:

  • 最上位区分(加算I)を取得・申請しているか
  • 賃金改善の内訳を求職者・在籍職員に明示しているか
  • キャリアパス要件(等級・昇給基準の文書化)が整備されているか

加算を取得していても「条件通知」をしていない施設は少なくありません。求職者が比較検討する段階で処遇の透明性が見えないと、他施設に流れます。求人票に「〇年目の月収例(夜勤あり・なし別)」を具体的に記載するだけで、他施設との差別化につながります。小さな一手ですが、効果は大きい。

中期(3か月〜1年で整備する施策)

離職防止と職場環境の整備

ICT化による業務負担の軽減は、既存スタッフの定着率改善に直結します。

具体的な手段:

  • 介護記録のICT化(紙記録からの移行で1日あたりの記録時間を削減)
  • インカム・見守りセンサーの導入(夜勤負担の軽減)
  • 夜勤者の単独夜勤解消に向けたシフト設計

また、入職後3年以内の職員に対するキャリア面談の定期実施も有効です。「3年後に自分がどこにいるかわからない」という不安が、離職の引き金になっています。

外国人介護士の受入れ検討

国内の採用市場だけで補えない人員ギャップに対して、外国人介護士の受入れは中期の現実的な選択肢となっています。出入国在留管理庁の統計によると、特定技能「介護」の在留者数は2025年10月末時点で約55,700人に達しており、2年弱で約2倍に増加しています( 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の推移」 )。受入れの判断基準については次のセクションで詳述します。

長期(1年以上かけて構築する施策)

地域・教育機関との連携パイプライン

地元の福祉系専門学校・大学との連携実習受入れは、採用パイプラインの中長期整備に有効です。実習を経験した学生が就職先を選ぶ際に「知っている施設」「よい印象を持った施設」を選ぶ傾向は明確にあります。連携実習受入れを年間計画に組み込んでいる施設では、新卒採用の安定化が報告されています。

施設ブランドの可視化

採用に強い施設は「見えない広告」を積み上げています。職員インタビュー記事・SNS発信・施設見学の積極受入れなど、施設の文化や働き方が求職者に伝わる仕組みを整えることが、採用単価の長期的な低減につながります。地道な活動に見えますが、中長期では最も費用対効果が高い施策の一つです。

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外国人介護士の受入れを判断するための基準

外国人介護士の受入れを検討する際、まず主要な在留資格の違いを整理することが必要です。在留資格によって採用ルート・費用・施設側の義務が異なります。

特定技能「介護」

  • 対象: 介護技能評価試験と日本語試験(N4相当)に合格した外国人
  • 在留期間: 1年・6か月・4か月の単位で更新可(通算5年まで)
  • 採用形態: 即戦力採用。国内在住者なら来日手続き不要で採用可能
  • 施設側の要件: 登録支援機関の活用(義務ではないが現実的に必要)
  • 注意点: 転職が可能なため、定着させるには職場環境整備が必要

在留資格「介護」

  • 対象: 介護福祉士国家資格保有者
  • 在留期間: 5年(更新可・上限なし)
  • 採用形態: 国家資格保有の即戦力
  • 特徴: 日本語能力が高い人材が多く、転職も可能

技能実習「介護」(廃止予定)

  • 対象: 海外からの来日実習生
  • 在留期間: 最長5年
  • 注意点: 2027年廃止予定。後継の「育成就労」制度への移行が決定しており、現時点での新規採用には慎重な検討が必要

在留資格ごとの詳細な比較と費用内訳は、 特定技能介護の制度解説記事 受入れ費用の内訳記事 でご確認いただけます。

受入れを「検討段階」から「実行段階」へ進める判断基準として、次のいずれかに当てはまる施設は受入れを具体的に動かすタイミングにあります。

  • 国内採用市場での充足率が80%を下回る状態が6か月以上続いている
  • 夜勤対応できる職員の数が必要水準を割り込んでいる
  • 新卒・転職者の育成に割けるリーダー職員のキャパシティが確保できている

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受入れ施設の失敗パターンと回避策

外国人介護士の受入れを試みて、思うような成果が出なかった施設には共通した失敗パターンがあります。把握しておかないと、同じ轍を踏みます。

失敗パターン1:日本語能力への過度な期待

特定技能「介護」はN4相当が要件です。「N4合格なら申し送りも問題ない」と思って受け入れたものの、業務専門用語・方言・利用者固有の話し方についていけず、入職初月からコミュニケーションに課題が生じたケースがあります。

回避策: 入職前に業務用語集と申し送りの定型文例を準備する。最初の3か月は指導担当(メンター)を明確に決め、週次で面談する体制を整える。N2レベルの在日外国人人材であれば即日現場対応が可能なケースも多いため、施設のOJT体制と合わせて求めるスキルレベルを選択する。

失敗パターン2:受入れコストを「採用費のみ」で計上した

紹介手数料だけを予算に計上し、入職後の登録支援機関費用(月次2〜3万円/人)・住居サポート費用・在留資格申請費用を見積もっていなかった施設が、採用後に予算不足で受入れ体制が崩れるケースがあります。

回避策: 受入れにかかる費用の全体像 を事前に確認し、初期費用・月次費用・緊急時対応費用を含めた総コストで判断する。

失敗パターン3:既存スタッフへの事前説明が不十分

外国人介護士の採用を突然発表し、既存スタッフに「なぜ外国人を採用するのか」「自分たちの仕事が変わるのか」という不安が広がった。この不安が解消されないまま入職日を迎え、チームの雰囲気が悪化した施設があります。

回避策: 受入れ決定後、速やかに施設長・主任が既存スタッフへ採用の背景と役割分担を説明する。「業務を補完するチームメンバーとして迎える」という位置づけを明確にし、指導担当者を事前に選定・合意させる。

失敗パターン4:文化・宗教習慣への配慮不足

ハラール食への対応や礼拝時間の確保について事前確認・調整がなく、在職2か月で離職につながったケースがあります。特にムスリムが多いインドネシア・ミャンマー出身の人材では、食事・休憩スペースの配慮が定着率に影響します。

回避策: 受入れ前に採用候補者の宗教・文化習慣を確認し、必要な環境整備を行う。母国語対応スタッフのいる支援機関を活用することで、入職後のトラブル対応速度が上がります。

受入れ全体の流れと注意点は 外国人介護士の受入れ実務解説 で詳しく解説しています。

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実務チェックリスト:介護施設の人材難 解決策の優先順位を決める7つの問い

施設長・人事担当者が短時間で現状を確認し、どの解決策から着手するかを判断するためのチェックリストです。チェックが入らない項目が「優先して取り組むべき課題」です。

採用・定着データの把握

  1. 直近12か月の離職率を数字で把握していますか?(業界平均14.4%との比較)
  2. 離職理由をカテゴリ別に集計していますか?(賃金・人間関係・体力的負担など)
  3. 求人の応募数・内定辞退率を月次でモニタリングしていますか?

処遇・制度の整備状況

  1. 介護職員等処遇改善加算の最上位区分を取得・申請していますか?
  2. キャリアパス(等級・昇給基準)を文書化し、全職員に周知していますか?
  3. 夜勤負担の集中(特定職員への偏り)を把握し、対策を検討していますか?

外国人介護士受入れの検討

  1. 国内採用だけでは補えない人員ギャップ(人数・時間帯・職種別)を定量的に把握していますか?

1〜3にチェックが入らない施設は、解決策を動かす前にまずデータ収集の仕組みから整えることをお勧めします。「何が問題か」が定量的に見えていない状態では、採用費・ICT投資・外国人介護士受入れのどれを優先すべきかの判断ができません。

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介護現場でよくある相談

Q. 採用費をかけてもすぐ辞めてしまいます。どこから手をつければいいですか?

A. まず退職面談のヒアリング内容を集計し、離職理由の主因を特定することが最優先です。「給与」「人間関係」「体力的な負担」「キャリアへの不安」では対策がまったく異なります。ヒアリングの仕組みがない場合は、在職者への無記名アンケートを半年に一度実施するだけでも傾向が見えてきます。採用費追加の前に定着改善の施策を1つでも動かすことで離職率が下がると、採用費用対効果は大きく改善します。

Q. 外国人介護士を採用したいが、日本語の問題が心配です。どのレベルの人材を選べばいいですか?

A. 特定技能「介護」の場合、日本語試験N4相当が受験要件です。申し送りや記録対応には業務用語の習得期間が必要なため、入職後3か月は指導担当を付けることを前提に採用計画を立てることが現実的です。一方、すでに日本国内で生活・就労実績のある在日外国人でN2レベルの方であれば、即日現場対応が可能なケースも多くあります。施設のOJT体制と照らし合わせて、求めるスキルレベルを選択することをお勧めします。

Q. 処遇改善加算を取得しているのに求職者に響いていない気がします。なぜですか?

A. 加算の取得有無だけでは求職者は判断できません。「実際の月収例(〇年目・夜勤あり/なし)」を求人票や採用面接で具体的に提示することが重要です。加算区分と月収の関係を採用ページに掲載している施設は依然として少数派であり、そこに競合施設との差がつくポイントがあります。

Q. 小規模施設でも外国人介護士を受け入れられますか?

A. 特定技能「介護」の受入れに施設規模の上限・下限はありません。ただし登録支援機関への委託費(月次2〜3万円/人)や住居サポート体制の整備コストが施設負担となるため、1〜2名規模での受入れから始めて体制を整えながら拡大していく施設が多いです。費用感の詳細は 受入れ費用の内訳記事 をご参照ください。

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外国人介護士の受入れを検討中ですか?

「国内採用だけでは人員が補えない」「特定技能介護を受け入れたいが、何から始めればいいかわからない」というご相談を、多くの施設の施設長・人事担当者からいただいています。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、17万人超の在日外国人データベースをもとに、特定技能「介護」・在留資格「介護」・技能実習修了者の人材紹介を行っています。日本語N2レベルの人材も多く、申し送りや利用者対応への即対応が期待できます。初期費用・運用費用は0円〜、内定時のみ費用が発生する完全成功報酬型です。

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参考資料

  • 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に係る介護職員の需給推計について」
  • 介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査結果報告書」
  • 厚生労働省「職業安定業務統計(令和6年度)」
  • 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の推移」(2025年10月末時点)
  • 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算について(2024年度改定対応)」
ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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