介護2040年問題とは?深刻化する人材不足の実態と施設長が今すぐ備える採用戦略

この記事でわかること

  • 2040年問題の定義と、2025年問題との本質的な違い
  • 厚生労働省が公表した2040年度に必要な介護職員数と需給ギャップの実態
  • 受入れ施設が陥りやすい失敗パターンと、採用担当者が見落としやすいポイント
  • 施設長・採用担当者がすぐ使える段階別の実務チェックリスト

「2040年はまだ先の話」と感じている施設長は少なくないでしょう。しかし介護業界の採用市場はすでに2040年問題を「先取り」する形で逼迫しています。今日の採用難を放置したまま5年後・10年後を迎える施設と、今から体制を組み直す施設とでは、2040年代の経営安定性に大きな差が生まれます。

この記事では、介護2040年問題が何を意味するのかを数字で整理し、現場の施設長・採用担当者が今すぐ取るべき具体的な行動を示します。

2040年問題とは何か:2025年問題との違いを整理する

介護業界では「2025年問題」と「2040年問題」が混同されがちです。まず両者の違いを明確にしておきます。

2025年問題

団塊世代(1947〜1949年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者になる年です。2025年を境に、要介護・要支援認定者数と医療需要が一段と増加し、介護・医療の供給不足が深刻化すると予測されていました。この問題はすでに日常的な採用難・処遇改善の圧力として多くの施設が体感しています。

2040年問題

2040年問題は「高齢化の第二波」です。団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ)が65歳以上の高齢者になるのが2036〜2039年にかけてで、2040年前後に高齢者数が約3,953万人でピークを迎えます(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)。

同時に起きるのが現役世代(15〜64歳)の急激な減少です。2040年には現役世代1.5人程度で高齢者1人を支える構造になると推計されています。介護の需要は増え続ける一方、担い手となる働き世代の絶対数が大きく減るという二重苦が介護現場を直撃します。

2025年問題が「高齢者急増」なら、2040年問題は「高齢者急増+働き手の枯渇」です。施設経営への影響は後者のほうが根本的かつ構造的で、一時的な採用強化では対処できません。

数字で見る2040年の介護需給ギャップ

厚生労働省は2023年7月、「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」を公表しました。この推計によると、必要な介護職員数は段階的に増加します。

2026年度末

  • 必要数:約239万人
  • 現在(2022年度実績):約215万人
  • 追加確保が必要な数:約24万人

2032年度末

  • 必要数:約266万人
  • 追加確保が必要な数:約51万人(2022年度比)

2040年度末

  • 必要数:約272万人
  • 追加確保が必要な数:約57〜69万人(供給推計の前提により変動)

現在の介護従事者数約215万人に対し、2040年度には272万人が必要です。単純差引で約57万人の追加確保が必要な計算ですが、自然離職・高齢化退職を考慮すると、実質的な新規採用数はその数倍に上ります。労働力不足の推計では最大69万人超の不足を示す試算もあります( 厚生労働省「介護人材確保対策」 )。

訪問介護については状況がさらに深刻です。訪問介護員の平均年齢は54.4歳(介護労働安定センター「介護労働実態調査」令和4年度)と高く、2040年代には大量退職が見込まれます。現役世代の新規参入がなければ、在宅介護の提供体制が崩壊しかねない水準です。

これは「対岸の火事」ではありません。今すでに多くの施設が求人を出しても応募が来ない、ようやく採用しても半年以内に退職するという現実に直面しています。 介護業界の人手不足の構造的背景と現場データ については、別記事で詳しく解説しています。

施設経営が直面する3つのリスクシナリオ

2040年問題を「人が不足する」という抽象的な問題として捉えると、対策が後手に回ります。施設長の意思決定を助けるために、具体的な3つのリスクシナリオを整理します。

【図解イメージ:施設長の2040年対応フロー】施設の現状診断(充足率確認)→ 採用チャネル多角化(外国人材含む)→ 受け入れ体制整備→ 定着・育成→ 2040年代の安定経営。この流れを今年度から順次着手することが、施設存続の鍵になります。

シナリオA:定員割れによる収益悪化

介護職員が確保できなければ、入居・利用定員を維持できません。介護保険報酬は「サービス提供数×単価」で決まるため、職員不足は直接的な減収につながります。稼働率を意図的に下げてでも職員負担を軽減せざるを得ない状況が、2030年代に広まると考えられます。

シナリオB:既存職員の過重負担と連鎖退職

日本人職員が不足したまま運営を続けると、在職者の負担が増し、バーンアウトによる退職が続きます。1人抜けると残りの負担が増え、また退職が出るという負のスパイラルは、今この瞬間も多くの施設で起きています。

シナリオC:利用者の安全管理リスクの上昇

夜勤体制や急変時対応において職員数が基準ギリギリになると、利用者の安全が脅かされます。行政の指導・改善命令が下れば、評判低下と新規利用者の獲得困難が長期間続きます。

これら3つのリスクは連鎖します。今から人材確保の多角化戦略を立てないと、複数のリスクが同時に顕在化した際に対応できなくなります。

受入れ施設の失敗パターンと回避策

外国人介護士の活用は、介護人材不足2040対策の有効な柱のひとつです。すでに特定技能「介護」の在留者数は2025年10月末時点で約55,700人に達しており( 出入国在留管理庁「在留外国人統計」 )、制度活用は急速に広まっています。しかし、受入れに失敗する施設には共通のパターンがあります。

失敗パターン1:「2040年はまだ先」として先送りし、採用市場の逼迫に遅れる

外国人介護士の採用競争はすでに激化しています。日本語能力が高く介護経験を積んだ候補者は、複数の施設から引き合いがあります。「2040年が近づいたら考える」では、質の高い人材を確保できない時代がすぐそこまで来ています。

回避策: 今年度から外国人材の採用プロセスを試行し、自施設の受け入れ体制整備に使える最低限のノウハウを獲得しておく。

失敗パターン2:日本人採用のみに固執し、採用単価が上がり続ける

介護職の有効求人倍率は他の職種と比べても高水準が続いており、日本人求職者の取り合いが激化しています。採用コストを上げても応募数が増えない状況が常態化しています。

回避策: 採用チャネルを国内だけでなく、在日外国人を含む多角的な母集団形成に切り替える。 特定技能「介護」の制度と受入れ条件 を事前に把握することで、制度的な障壁を減らせます。

失敗パターン3:外国人材を「緊急避難的な人員補充」として扱い、定着率が低下する

「とにかく人数が足りないから」という緊急目的で採用すると、受け入れ体制が後手に回ります。外国人介護士が「居場所がない」と感じて早期退職するケースがあり、入社後3〜6か月に離職が集中するのが典型的なパターンです。

回避策: 採用前に受け入れルール・OJTプログラム・日本語サポート体制を整備する。外国人介護士を「ともに現場をつくる仲間」として施設全体でウェルカムな空気をつくることが定着率を左右します。

失敗パターン4:登録支援機関の選定を誤り、入社後フォローが不十分になる

特定技能「介護」では登録支援機関への支援委託が実質的に必須です。しかし登録支援機関の質にはばらつきがあります。書類手続きだけを代行して入社後フォローが手薄な機関を選ぶと、外国人介護士が孤立し、問題が表面化してから相談先がわからない状況に陥ります。

回避策: 登録支援機関を選ぶ際は、対応言語(ベトナム語・ネパール語等)、24時間相談対応の有無、入社後研修プログラムの内容を必ず確認する。

外国人介護士の受入れフローと実務上の注意点 は別記事で詳細に解説しています。

採用担当者が見落としやすいポイント

2040年問題への対応を進めるとき、採用担当者が見落としがちなポイントが3つあります。

在留資格の種類によって採用条件・業務範囲が大きく異なる

外国人介護士には主に以下の在留資格があります。在留資格を誤解したまま採用すると、「この業務は任せられなかった」という事態が発生します。

特定技能「介護」

  • 対象: 介護技能評価試験・日本語試験に合格した外国人
  • 就労範囲: 介護施設での介護業務(訪問介護は現行制度上不可)
  • 在留期間: 最長5年(介護福祉士取得で在留資格「介護」への変更可)
  • 採用の特徴: 現在最も普及。即戦力として受け入れやすい

在留資格「介護」

  • 対象: 介護福祉士国家資格を取得した外国人
  • 就労範囲: 制限なし(訪問介護も可)
  • 在留期間: 更新制限なし(長期就労・キャリアアップが見込める)
  • 採用の特徴: 安定した長期就労が期待できる。定着率が高い傾向

技能実習「介護」

  • 対象: 技能移転を目的とした在留資格
  • 就労範囲: 実習計画に準じた業務
  • 在留期間: 最長5年(修了後に特定技能への移行が可能)
  • 採用の特徴: 長期育成前提。修了後の移行でキャリアが継続できる

受入れ費用の全体像を採用前に把握する

外国人介護士の採用では、人材紹介手数料だけでなく在留資格申請費用・登録支援機関への月次委託費・住居サポートなどが発生します。 外国人介護士の受入れ費用の内訳と目安 を事前に把握しておくことで、予算計画と経営判断が円滑になります。

定着率を高める施設側の取り組みが長期的な解決策になる

受け入れ成功の分かれ目は採用よりも「入社後の1年」です。日本語でのコミュニケーション、業務手順の教え方、利用者・既存スタッフとの関係構築、宗教・文化的な配慮。これらを施設側が主体的に設計しないと、外国人介護士が「ここでは長く働けない」と感じてしまいます。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社が介護施設に紹介した事例では、入社後3か月間、母国語対応スタッフが週次でフォローアップ面談を行った施設ほど、1年後の在職率が高い傾向があります。「採用して終わり」ではなく「定着させてはじめてスタート」という意識が、2040年問題への実効性ある備えになります。

施設長のための2040年問題対応チェックリスト

以下は今日から段階的に動ける行動計画です。自施設の現状を確認しながらご活用ください。

今年度(2026年度末まで)に取り組むこと

  • [ ] 現在の介護職員充足率(対定員比)を算出し、2030年・2040年の需要増と対比する
  • [ ] 日本人採用チャネルの限界(応募数・採用単価の推移)を数字で把握する
  • [ ] 外国人介護士受け入れに必要な施設要件(規模・形態・受入れ条件)を確認する
  • [ ] 登録支援機関を少なくとも2社以上ヒアリングし、対応言語・フォロー体制を比較する
  • [ ] 既存の日本人スタッフに対して、外国人材との共働に向けた意識醸成を開始する

中期(2027〜2030年)に整備すること

  • [ ] 特定技能「介護」または在留資格「介護」の外国人介護士を最低1〜2名受け入れ、自施設の受入れ体制を実地で検証する
  • [ ] OJTマニュアル・申し送り補助ツール(絵カード・チェックシート等)を整備する
  • [ ] 外国人介護士のキャリアパス(介護福祉士国家資格取得支援等)を制度化する
  • [ ] 外国人材の採用を前提とした中長期採用計画(年次目標)を策定する

長期(2031〜2040年)に向けた視点

  • [ ] 外国人介護士の比率が全体の20〜30%になる場合の施設運営ルール・コミュニケーション設計を検討する
  • [ ] 登録支援機関・人材紹介会社との長期パートナーシップを構築し、安定的な供給ラインを確保する
  • [ ] 「外国人介護士が選ぶ施設」としての職場ブランディングを計画する

このチェックリストは施設の規模・形態・地域によって優先順位が異なります。「どこから着手すべきか」の整理には専門家への相談が早道です。

外国人介護士との協働が2040年を乗り越える鍵になる

2040年問題への対応策は、介護ロボットのICT活用・業務効率化・処遇改善など複数の手段が存在します。しかし「人と人のケア」が本質である介護において、外国人介護士との協働は単なる「人手の補充」ではありません。

出入国在留管理庁によると、特定技能「介護」の在留者は2025年10月末時点で約55,700人に達し、ここ数年で急増しています。すでに多くの施設で外国人介護士が利用者の笑顔を引き出し、夜勤帯の安全を守っています。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社が介護施設に紹介したベトナム人介護士の事例では、入社後1年以内に夜勤リーダーを任せてもらえるほどに成長し、「外国の方だから不安だったが、今では頼りにしている」と施設長が語るケースが生まれています。施設側が受け入れに本気で向き合うほど、外国人介護士も施設への貢献意識を高めます。

重要なのは「人数の確保」だけでなく「関係性の質」です。2040年問題は危機ですが、外国人介護士との関係を今から丁寧に積み上げることで、2040年代も安定した介護サービスを提供できる施設になる機会でもあります。

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ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、特定技能「介護」・在留資格「介護」の人材紹介を行っています。17万人超の在日外国人データベースから、日本語N2水準を持つ即戦力人材をご紹介。初期費用・運用費用は0円〜、内定時のみ費用が発生する完全成功報酬型です。

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よくある質問(FAQ)

Q. 2040年問題と2025年問題、介護施設にとってより深刻なのはどちらですか?

短期的な衝撃は2025年問題ですが、構造的・長期的な深刻さは2040年問題のほうが上です。2025年問題は高齢者数の急増ですが、2040年問題は高齢者急増と現役世代の激減が同時に起き、介護の需要と担い手のバランスが根本から崩れます。今から対策を取ることで、2040年代の経営安定性を高めることができます。

Q. 外国人介護士の採用は、何名規模の施設から検討すべきですか?

施設規模に法的な制限はなく、小規模施設でも受け入れは可能です。ただし登録支援機関への委託費用や受け入れ体制の整備コストが発生するため、職員規模が小さいほど1人あたりのコスト負担感は大きくなります。同じ地域の複数施設が連携して登録支援機関を共有するケースも出てきており、小規模施設はこうした協調モデルも選択肢のひとつです。まず1〜2名の受け入れから始め、自施設のノウハウを蓄積することをお勧めします。

Q. 介護福祉士の国家試験は、外国人介護士でも合格できますか?

はい、合格実績があります。介護福祉士国家試験は筆記と実技(一部免除)の2部構成で、実質的にN2〜N1水準の日本語能力が必要とされています。弊社が紹介した外国人介護士の中にも、就労後3〜4年で合格し在留資格「介護」を取得した方がいます。施設側のキャリアサポート(試験対策研修の提供・受験費用の補助等)が合否を左右する大きな要因です。

Q. 訪問介護でも外国人介護士を活用できますか?

2026年5月時点の現行制度では、特定技能「介護」での訪問介護業務は認められていません。在留資格「介護」(介護福祉士国家資格保有者)であれば訪問介護も可能です。制度の動向は変化することがあるため、最新情報は出入国在留管理庁の公式ページでご確認ください。

Q. 2040年問題に備えた採用計画を立てる際、まず何から始めればよいですか?

最初のステップは「現在の充足率の数値化」です。定員に対して現在の職員数が何%か、過去3年の採用数・離職数の推移はどうか、を整理するだけで、2040年に向けた不足の深刻度が見えてきます。次に、日本人採用チャネルの限界と外国人材活用の可能性を並べて比較し、優先度の高い施策を1〜2つに絞って今年度内に着手することが現実的な第一歩です。

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*本記事の情報は2026年5月時点のものです。制度・統計データは変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省・出入国在留管理庁の公式ページをご確認ください。*

*編集:ともにケア編集部(運営:ユアブライト株式会社)*

ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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