介護施設の経営指標(KPI)完全ガイド|稼働率・離職率・加算取得を管理する5つのステップ

「稼働率が上がらない」「職員の離職が止まらない」「取れているはずの加算が漏れている気がする」。介護施設の施設長・経営層からよく聞くこうした悩みの多くは、経営指標(KPI)の見えにくさに起因しています。

介護施設の経営は、医療・社会福祉法人・株式会社など運営主体の形態を問わず、収益・人材・ケア品質という三つの柱を同時に維持しなければなりません。この三つをバランスよく管理するためのツールが、KPIです。数値で経営を追うことは難しそうに感じるかもしれませんが、正しい指標を選んで継続的に見ていくだけで、施設の状態が格段に把握しやすくなります。

本記事では、介護施設の施設長・人事責任者・経営層が押さえるべき主要経営指標を体系的に整理し、それぞれの目標値・改善アプローチ・外国人介護士受入れとの連動効果を解説します。「数値管理の仕組みをゼロからつくりたい」という方にも、「現行のKPI体系を見直したい」という方にも、実践に使えるガイドとして読んでいただけます。

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介護施設経営に欠かせない主要KPIの全体像

介護施設のKPIは大きく「収益系」「人材系」「品質系」の三カテゴリーに分類できます。それぞれの代表的な指標と管理頻度の目安を以下に整理します。

収益系KPI

稼働率

  • 定義: 利用定員に対する実際の利用者数の割合(月次平均)
  • 管理頻度: 月次
  • 業界目安: 特養92%以上、老健90%以上

介護報酬加算取得率

  • 定義: 算定可能な加算のうち実際に取得できている割合
  • 管理頻度: 月次(制度改定時に通年見直し)
  • 業界目安: 施設種別ごとに異なる。LIFE関連・処遇改善系が未取得の場合、月100万円超の機会損失になるケースもある

人件費率

  • 定義: 事業収益に占める人件費の割合
  • 管理頻度: 月次
  • 業界目安: 特養65〜70%、有料老人ホーム55〜65%が目安(WAMデータより)

人材系KPI

介護職員の年間離職率

  • 定義: 年間退職者数 ÷ 期初在籍者数 × 100
  • 管理頻度: 四半期累計・年次
  • 業界目安: 全国平均約13〜14%(介護労働安定センター調査)。10%以下を目指す施設が多い

職員定着率(3年定着率)

  • 定義: 入社後3年時点で在籍している職員の割合
  • 管理頻度: 年次(コホート管理)
  • 業界目安: 60〜70%以上が安定施設の水準とされる

夜勤従事者一人当たり月間夜勤回数

  • 定義: 月間夜勤延べ回数 ÷ 夜勤従事者数
  • 管理頻度: 月次
  • 業界目安: 介護報酬改定の流れから、8回以下が望ましいとされる

品質系KPI

事故発生率(転倒・誤薬等)

  • 定義: 利用者延べ日数に対するヒヤリハット・事故件数の比率
  • 管理頻度: 月次
  • 業界目安: 施設種別・利用者属性で異なるため、自施設の前年比・月次トレンドで管理する

利用者・家族満足度スコア

  • 定義: 年次アンケートによる満足度スコア(5段階評価など)
  • 管理頻度: 年次(自施設設計のアンケートによる)
  • 業界目安: スコアの絶対値より前年比改善トレンドと課題分析が重要

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収益を左右する「稼働率」の管理

稼働率は、介護施設の収益力を最も直接的に示す指標です。定員100名の特養で稼働率が85%と92%では、月間の介護報酬に数百万円単位の差が生じることもあります。「うちはずっとこのくらい」と思い込んでいる施設長も多いですが、少し仕組みを変えるだけで数ポイントの改善は十分に狙えます。

稼働率が低下する主因は大きく三つあります。一つ目は退所・死亡後の空床期間の長さ、二つ目は待機者管理の非効率性、三つ目は地域関係機関との連携不足です。

稼働率を改善するための具体的な打ち手は次の通りです。

まず「空床連絡の速度」を上げることが効果的です。空床が発生したら24時間以内に居宅介護支援事業所・地域包括支援センター・病院MSWに連絡する体制をつくると、空床期間を短縮できます。次に「待機者台帳の定期整備」が重要です。登録後1年以上経過した待機者への状況確認を怠ると、実質的な待機者数が見えなくなります。三つ目は「地域関係機関への情報発信」で、施設のサービス内容・受入れ可能な要介護度を定期的に周知することで、紹介ルートが太くなります。

稼働率は短期間で劇的に改善するものではありませんが、月単位で数値を追い、上記のアクションを継続することで、6〜12か月で2〜3ポイントの改善は十分に実現可能です。

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収益構造を変える「加算取得率」

介護報酬体系には、基本報酬の他に多数の「加算」が設定されています。これらの加算を漏れなく取得できているかどうかは、同じ利用者数でも月間収益に大きな差をもたらします。「うちは全部取れているはず」と思っていても、制度改定のたびに要件が変わるため、気づかないうちに取れていない加算が増えているケースは珍しくありません。

特に取得漏れが多いのは、以下の種類の加算です。

LIFE(科学的介護情報システム)関連加算は、LIFEへのデータ提出と活用が要件ですが、システム操作やデータ管理の煩雑さから未取得のままにしている施設が少なくありません。令和6年度改定でさらに要件が整理されたため、現在の算定状況を改めて確認する価値があります。

処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算は、区分が複数あり、要件を満たしているにもかかわらず下位区分で算定している施設もあります。年に一度、社会保険労務士や介護報酬コンサルタントに棚卸しを依頼するのが有効です。

看取り介護加算は、看取りケアの体制と記録要件を整備すれば取得できるケースが多いですが、「手続きが複雑そう」という思い込みから取り組みが後回しになりがちです。

加算取得率の管理は、「今取れているか」だけでなく「取れていない加算の要件充足まで何が足りないか」というアクションベースの視点で行うと、経営改善の具体策が見えてきます。

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人材基盤を支える「職員定着率・離職率」

介護施設の人材系KPIの中で、稼働率と並んで経営に直結するのが「職員定着率・離職率」です。介護労働安定センターの令和5年度調査によると、介護職員の年間離職率は全国平均で13.1%です。一人の介護職員を採用・育成するコストは数十万円に上ることが多く、離職率が高止まりすると採用コストが経営を圧迫し続けます。「毎年同じくらい辞めているから仕方ない」と放置するのは、経営上かなりリスクの高い判断です。

離職率改善のための打ち手は、離職原因によって異なります。退職者ヒアリングや在職者への1on1面談でデータを集めないと、的外れな施策を打ち続けるリスクがあります。

主な離職原因とその対策を整理すると、次のようになります。

給与・待遇への不満が原因の場合は、処遇改善加算の確実な取得と職員への適正配分が優先課題です。加算を取得しても職員の給与に反映されていないと意味がありません。

夜勤負担の重さが原因の場合は、人員の補充とローテーション改善が必要です。月8回を超える夜勤が常態化している施設では、職員の疲弊が離職につながりやすくなります。

職場の人間関係・マネジメントへの不満が原因の場合は、ユニットリーダーや主任クラスへのマネジメント研修と、組織開発の取り組みが有効です。

キャリアパスが見えないことが原因の場合は、介護福祉士・認定介護福祉士への資格取得支援や、役職登用の基準を明確にすることで、在籍意欲が高まります。離職率改善は一朝一夕には進みませんが、原因を特定して一つずつ手を打てば、必ず数値は動いてきます。

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外国人介護士の受入れが経営指標に与える効果

人材不足の解消策として外国人介護士の受入れを検討している施設が増えていますが、受入れの効果は「人手が増える」という一点だけではありません。複数の経営指標に波及効果があります。以下に主要な影響を整理します。

稼働率への効果

  • 内容: 配置基準を安定的に満たすことで、閉鎖していたユニットや病棟の再開が可能になるケースがある
  • 期待値: 利用定員に対して稼働率が2〜5ポイント程度改善した施設の事例が報告されている
  • 留意点: 入国から業務習熟まで一定期間が必要なため、稼働率改善の効果は入社後3〜6か月以降に現れることが多い

夜勤負担軽減・職員定着率への効果

  • 内容: 外国人介護士が夜勤に入れるようになることで、既存の日本人職員の夜勤ローテーションが緩和される
  • 期待値: 職員の夜勤回数を月1〜2回削減できる施設が多い
  • 留意点: 文化的背景の違いによるコミュニケーション摩擦が定着を妨げることもある。入社後フォローの仕組みが定着率を左右する

人件費率への効果

  • 内容: 採用コスト構造の変化(紹介手数料と継続的な支援委託費のバランス)
  • 期待値: 長期定着した場合、採用コストは中長期で逓減し、人件費率の安定化に寄与する
  • 留意点: 受入れ初年度は在留資格申請費用・登録支援機関への委託費が発生する。詳細は 外国人介護士受入れの費用と内訳 を参照

利用者満足度への効果

  • 内容: 職員の余裕が生まれることによるケアの質向上
  • 期待値: 人員充足率が改善した施設では、事故発生率の低減と満足度スコアの改善が報告されるケースがある
  • 留意点: 外国人介護士が担当するユニットへの利用者・家族の不安が初期に生じることがある。施設側の丁寧な説明と段階的な業務移行が重要

外国人介護士の受入れは「人手不足を埋める手段」ではなく、既存職員の負担軽減・定着促進・稼働率改善という複数の経営指標を同時に改善しうる戦略的な選択肢です。

KPI管理を仕組み化する5つの実践ステップ

KPIを「知っている」だけでは経営は変わりません。継続的に管理し、PDCAを回す仕組みをつくることが重要です。難しく考える必要はなく、まずは「数値を定期的に見る習慣」をつくるところから始めれば十分です。

ステップ1:現状数値の可視化

まず現在の各KPI数値を書き出します。稼働率・離職率・加算取得状況は、月次経営会議の資料として整理するところから始めましょう。数値が「見える化」されていない指標は管理できません。現状を知ることが、すべての改善の出発点です。

ステップ2:目標値の設定

業界中央値(WAM経営分析参考指標・介護労働安定センター調査等を参照)と自施設の直近3年間のトレンドを踏まえて、半期・年間の目標値を設定します。「業界平均プラス2〜3ポイント」を起点にするのが実践的です。高すぎる目標は現場のモチベーションを損ない、低すぎる目標は改善効果が見えにくくなります。現実的で少しストレッチのある数値を設定することが大切です。

ステップ3:モニタリングのサイクルを決める

  • 月次レビュー: 稼働率・人件費率・事故発生率・月次収支
  • 四半期レビュー: 離職率・定着率・加算取得率・利用者満足度スコア
  • 年次レビュー: KPI体系の見直し・目標値の改定・翌年度の重点テーマ設定

モニタリングサイクルを決めておかないと、問題が大きくなってから気づくことになります。特に離職率は月次で累計を追うことで、早期に異常サインをキャッチできます。

ステップ4:課題に応じたアクションの実行

各KPIが目標を下回った場合、原因仮説を立て、改善アクションを1つ以上実行します。複数の課題を同時に解決しようとすると効果測定が困難になるため、四半期ごとに「重点改善KPI」を1〜2つ絞り込む方が実効性は高まります。「全部一度に直そう」という発想は、結局どれも中途半端になりがちです。

ステップ5:中堅リーダーへの共有と文化の醸成

KPIは施設長だけが見るものではありません。ユニットリーダー・主任クラスまで共有することで、現場からの改善アイデアが集まりやすくなります。数値を「責任追及の道具」ではなく「施設全体の道標」として使う文化が、KPI管理の継続性を高める最大の要因です。

よくある質問(FAQ)

Q. 介護施設の稼働率の理想的な目標値はどのくらいですか?

施設種別によって異なりますが、特別養護老人ホームでは92%以上、介護老人保健施設では90%以上を一つの目安とする施設が多いです。独立行政法人福祉医療機構のデータでは、特養の全国中央値は約89%です(2023年度)。現状が85%を下回っている場合は、待機者管理の見直しと地域関係機関との連携強化を優先して取り組むことをお勧めします。

Q. 介護職員の離職率を下げるために最初に取り組むべきことは何ですか?

まず離職原因の把握から始めることをお勧めします。退職者へのヒアリングや、在職中の職員への定期的な1on1面談で「何が不満か」を具体的に把握することが先決です。原因が給与水準にある場合は処遇改善加算の確実な取得と分配、夜勤負担にある場合は人員の補充とローテーション見直し、職場の人間関係にある場合はリーダー研修と組織開発、というように、原因に応じた対策が変わります。全部一度に取り組もうとせず、最大の離職要因1つに集中して四半期単位で改善を測定する方が効果を検証しやすいです。

Q. 外国人介護士を受け入れた場合、経営指標の改善はどれくらいの期間で現れますか?

受入れから夜勤独立まで平均3〜6か月程度かかる場合が多く、既存職員の夜勤負担軽減や稼働率への効果は概ね入社後6か月以降に数値として現れてくる施設が多いです。離職率の改善は1年単位で見るのが実態に即しています。受入れ初年度はコストと効果が拮抗することもあるため、2年目以降の中期視点でROIを評価することが重要です。制度の詳細は 特定技能「介護」の制度解説 をご参照ください。

Q. 加算の算定漏れはどうやって発見すればよいですか?

厚生労働省が公表している各施設種別の「加算・減算一覧」と、自施設の現在の算定状況を照合するチェックリストを作成することが出発点です。年に一度、介護報酬コンサルタントや社会保険労務士・行政書士などの専門家に算定漏れの棚卸しを依頼する施設も増えています。特に見落としが多いのは、要件が毎年更新されるLIFE関連加算や処遇改善加算の区分変更です。加算要件の最新情報は 厚生労働省介護・高齢者福祉のページ で随時確認することをお勧めします。

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介護施設の経営指標管理は、一度仕組みを整えてしまえば、継続的な改善の基盤になります。稼働率・加算取得率・職員定着率という収益・人材・品質の3軸を数値で追うことで、「どこに手を打てば経営が安定するか」が見えてきます。

外国人介護士の受入れを経営改善の選択肢として検討していますか?

「職員定着率が下がっている」「稼働率を上げたいが人手が足りない」というご相談を、施設長・人事責任者から多くいただきます。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、特定技能「介護」・在留資格「介護」・技能実習修了者など即戦力の外国人介護士を施設にご紹介しています。17万人超の在日外国人データベースから、貴施設の状況に合う人材をご提案します。初期費用・運用費用は0円〜、内定時のみ費用が発生する完全成功報酬型です。

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参考資料

  • 厚生労働省「介護・高齢者福祉」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushikaigo/kaigokoureisha/index.html
  • 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「介護経営情報」https://www.wam.go.jp/hp/guide-infomatio-kaigoservice/
  • 公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」
  • 出入国在留管理庁「令和7年10月末現在における特定技能在留外国人数について」
ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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