介護の人手不足はなぜ深刻?現状と原因・2040年問題と施設長が取るべき人材確保の対策

この記事でわかること

  • 2026年時点の介護人手不足の規模と、有効求人倍率・離職率が示す構造的背景
  • 2040年問題が施設の採用・定着戦略に与える影響と地域格差の実態
  • 採用担当者が陥りやすい失敗パターンと、外国人介護士の活用を含む今すぐ動ける対策

「求人を出しても応募がない」「やっと採用できた職員が3か月で辞めてしまう」。ともにケアに寄せられる相談の中で、こうした声は施設長・人事担当者から最も多く届きます。

介護の人手不足は、2026年現在も改善の兆しが見えていません。 厚生労働省の推計 によると、2040年度には介護職員の必要数が約272万人に達する一方、2022年度の従事者数は約215万人にとどまります。この約57万人規模の需給ギャップは、将来の課題ではなく、今の施設運営の意思決定に直結する問題です。

この記事では、人手不足の構造的な原因を整理したうえで、施設長・採用担当者が今すぐ判断できる実務的な対策の枠組みを提供します。

数字で見る介護人手不足の現状(2026年)

有効求人倍率は約3.8倍

厚生労働省が公表する職業別の有効求人倍率(2023年度平均)によると、介護サービス職は約3.8倍です。全職種平均の1.2倍前後と比べると、介護分野の採用競争の激しさが際立ちます。

有効求人倍率が高いということは、施設間で同じ求職者を奪い合っている状態を意味します。賃金・処遇で差別化できなければ、求人掲載コストをかけ続けても採用に至らないのが現実です。

施設の約6割が「人手が不足している」と回答

公益財団法人介護労働安定センター 「令和6年度 介護労働実態調査」では、介護施設・事業所の約6割が「人手が不足している」と回答しています。この数字は数年間ほぼ変わっておらず、「毎年不足」が常態化しています。

離職率14.4%と1年未満離職37%の二重コスト

同調査によると、介護職員の離職率は約14.4%(令和4年度)です。産業全体平均と大差ないように見えますが、介護職の場合は慢性的な人員不足の状態で離職が発生するため、1人の退職が現場に与えるダメージは他産業より大きくなります。

さらに深刻なのが、1年未満で離職した職員の割合が約37%に上る点です。採用費・教育コストが定着前に無駄になり、残った職員の業務負荷が増し、さらに離職が起きる悪循環が生まれます。採用にかけた投資が回収できないまま次の採用コストが発生するという「二重コスト」の構造は、施設経営を長期的に圧迫します。

介護職員の月額平均賃金は約31万円

厚生労働省「令和5年度 介護従事者処遇状況等調査」によると、介護職員の月額平均賃金は常勤で約31万円程度です。2022年度から段階的に実施されている「介護職員等ベースアップ等支援加算」により改善が図られていますが、物価上昇分を加味すると実質賃金が横ばいという施設も少なくありません。

人手不足の構造的な3つの原因

介護の人手不足を「賃金だけの問題」と捉えると、対策が表面的になります。現場の実態を整理すると、主に3つの構造的要因が絡み合っています。

原因1:少子高齢化による需給の根本的なミスマッチ

2024年時点で日本の65歳以上人口は約3,600万人(総務省統計局)です。2040年に向けて要介護・要支援認定者数はさらに増え続けます。一方で、介護職の担い手となる生産年齢人口(15〜64歳)は減少を続けています。

この需要増加と供給縮小が同時に進む構造が、介護の人手不足の根本です。制度の整備や処遇改善だけでは解消できない問題として、施設経営の前提に置く必要があります。

原因2:賃金水準の相対的な低さと他産業との格差

全産業平均や医療職と比較すると介護職の賃金は依然として低水準にあります。物価上昇が続く中で実質賃金の改善が追いつかず、体力のある他産業への人材流出が続いています。特にコンビニ・物流・飲食などサービス系の他職種との賃金差が縮まらないことが、介護職への新規参入者の減少につながっています。

原因3:身体的・精神的負担と職場環境の問題

介護職特有の身体的な負荷・夜勤・変則勤務・感情労働のきつさは、求職者の参入障壁になるとともに離職率を押し上げます。特に特別養護老人ホームや介護老人保健施設では、夜勤体制が慢性的に薄く、1人当たりの担当数が増えることで業務負荷がさらに上がる悪循環が起きています。「人が足りないから残った職員が疲弊し、さらに辞める」このサイクルを断ち切ることが施設運営の最優先課題の一つです。

2040年問題が介護施設の経営に与える影響

「2040年問題」の本質

2040年問題とは、団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ)が65〜69歳に達することで要介護者が急増する社会構造の変化を指します。厚生労働省の推計では、2040年度に必要な介護職員数は約272万人です。2022年度の従事者数約215万人との差は約57万人であり、既存職員の退職・離職分を加味すると実質的な新規確保必要数はさらに大きくなります。

図解:介護人材の需給ギャップが生まれる構造

以下のフローで、需給ギャップがどのように積み上がるかを整理できます。

需要側(増加要因)

  1. 高齢者人口の増加(2040年に65歳以上が約3,900万人規模)
  2. 要介護・要支援認定者数の増加
  3. 在宅・施設介護サービスの利用拡大

供給側(減少・停滞要因)

  1. 生産年齢人口の継続的な減少
  2. 賃金・処遇格差による他産業への人材流出
  3. 高い離職率による実労働力の目減り

この構造が重なることで、政策的な介入がなければ2040年に約57万人規模の不足が固定化されます。施設長としては「業界全体の問題」と傍観するのではなく、今のうちから採用・定着・多様な人材活用の複合戦略を設計することが求められます。

地域格差が深刻化している

人手不足の深刻度は地域によって異なります。都市部では施設間の賃金競争が激化し、地方では求職者数そのものが減少するという、それぞれ異なる形での採用難が発生しています。

特に過疎地域の施設では、近隣の求職者母集団が小さく、地元採用だけで必要な職員数を確保できないという問題が既に顕在化しています。こうした地域では、外国人介護士を含む多様な人材の受入れが現実的かつ急務の選択肢として浮上しています。

受入れ施設の失敗パターンと回避策

採用担当者がよく陥る失敗には共通のパターンがあります。人手不足の焦りから生まれる判断ミスは、かえって現場の負担を増やし、長期的なコストを押し上げます。

失敗パターン1:欠員を「とにかく数で埋める」採用

スキルや適性の確認を省いて採用するケースです。入職後に業務の質が下がる、既存職員との摩擦が生じる、3〜6か月で離職するサイクルに陥るリスクが高まります。

回避策:採用基準の「最低ライン」を文書化し、欠員時でもそのラインを下回る候補者は採用しないルールを設けてください。「入れてから育てる」という方針と「採用基準を下げる」は別のことです。前者は育成投資を覚悟した意思決定ですが、後者は基準自体を放棄することです。この区別を採用担当者間で共有しておくことが重要です。

失敗パターン2:外国人介護士の受入れ準備なしのスタート

「外国人なら来てくれる」という発想で手続きだけ整えて受入れを始めても、現場の日本人スタッフが対応方法を知らず、外国人介護士を孤立させてしまうケースがあります。受入れ後3か月以内の退職申し出は、こうした準備不足が原因であることがほとんどです。

回避策:受入れ前に、既存スタッフへの文化的背景の説明、業務マニュアルのやさしい日本語化、申し送りフォーマットの整備を先行させてください。 外国人介護士の受入れの流れと実務 を参考にチェックリストを活用することをお勧めします。

失敗パターン3:採用後の定着支援がゼロ

採用した職員が初月に悩みを抱えていても相談できる相手がいない状況も定着を妨げます。外国人介護士の場合は特に、言語と文化の壁が孤立感につながりやすく、入職直後の関係構築が定着率に直結します。

回避策:入職後30日・60日・90日のフォロー面談を標準化してください。外国人介護士の場合は、母国語対応のサポート体制(特定技能の場合は登録支援機関)があるかを受入れ前に確認しておくことが不可欠です。

外国人介護士という選択肢:施設長が判断する3つの視点

なぜ今、外国人介護士の活用が進んでいるか

出入国在留管理庁 の統計によると、2024年10月末時点で特定技能「介護」の在留者数は約6万人を超えています。2019年の制度創設から約5年で急速に拡大しており、現場での活用実績も積み上がってきました。

介護領域で就労できる在留資格には主に3種類あります。施設の状況と候補者のキャリア目標を照合して選択することが重要です。

特定技能「介護」

  • 要件: 介護技能評価試験・日本語試験に合格、または技能実習2号修了
  • 在留期間: 1年ごとの更新(通算上限なし、2023年の法改正以降)
  • 就労可能な施設: 訪問系サービスを除く介護施設全般
  • 家族帯同: 原則不可

在留資格「介護」

  • 要件: 介護福祉士国家資格の取得
  • 在留期間: 5年(更新可)
  • 就労可能な施設: 訪問系サービスを含むほぼ全施設
  • 家族帯同: 可

技能実習「介護」

  • 要件: 監理団体を通じた受入れ、実習計画の策定
  • 在留期間: 最長5年(2号修了後に特定技能へ移行可)
  • 就労可能な施設: 実習計画に定めた施設のみ

制度の詳細については 特定技能介護の制度解説 をご参照ください。また、 受入れコストの内訳 も施設の意思決定に役立ちます。

視点1:受入れ環境の整備が先か、採用が先か

外国人介護士の受入れが成功するかどうかは、候補者のスキルと同じくらい施設側の準備が重要です。既存スタッフがやさしい日本語でコミュニケーションを取れるか、業務マニュアルが整備されているかを採用決定前に確認してください。

視点2:定着を見越した在留資格の選択

長期雇用を見込むなら、更新上限のない特定技能や家族帯同が可能な在留資格「介護」が有力な選択肢です。一方で、候補者のキャリア目標(介護福祉士の国家資格取得を目指しているかなど)とマッチングさせることも重要です。施設が育成投資として関われるかどうかが、優秀な候補者を惹きつける条件の一つになります。

視点3:文化的背景を踏まえたマネジメント

「日本語が話せれば大丈夫」ではありません。ベトナム・ネパール・インドネシアなど送出し国によって、職場でのコミュニケーションスタイルや価値観が異なります。 外国人介護士とのコミュニケーション で紹介しているような、文化的背景を踏まえたマネジメントが定着率を左右します。

ともにケアを通じてベトナム人介護士を受け入れた関東の特別養護老人ホームでは、受入れから6か月後に「夜勤の組み方が柔軟になった」と施設長が話していました。入職前に業務マニュアルをやさしい日本語化し、週次の申し送り確認ルーティンを設けたことで、入職3か月後には夜勤ローテーションに加わることができています。「失敗したら終わり」ではなく「最初の3か月は失敗前提で伴走する」という管理職の姿勢が、定着の鍵でした。

実務チェックリスト:採用担当者が今すぐ確認すべきこと

現状把握チェック

  • 現在の職員数と必要職員数のギャップを数字で把握しているか
  • 直近1年間の離職者数・離職理由を分類して記録しているか
  • 求人媒体ごとの応募数・採用数・定着率を追跡しているか
  • 処遇改善加算の算定状況と活用率を確認しているか
  • 地域の有効求人倍率など採用市況を定期的にチェックしているか

採用プロセスチェック

  • 採用基準(スキル・適性の最低ライン)が文書化されているか
  • 面接の評価項目が担当者間で統一されているか
  • 内定後から入職前のフォロー(内定辞退防止施策)を行っているか
  • 入職後30日・60日・90日のフォロー面談を標準化しているか

外国人介護士の受入れを検討する施設向け追加チェック

  • 特定技能・技能実習・在留資格「介護」の違いを正確に把握しているか
  • 既存スタッフへの受入れ前オリエンテーションを計画しているか
  • 業務マニュアルをやさしい日本語で整備しているか
  • 登録支援機関(特定技能の場合)または監理団体(技能実習の場合)との連携体制があるか
  • 住居・生活サポートの受入れ環境を整えているか

よくある質問

Q. 介護の人手不足は今後改善される見込みはありますか?

厚生労働省の推計では、2040年に向けて需給ギャップはさらに拡大する見通しです。政府はICT・介護ロボット活用や外国人材の受入れ拡大を推進していますが、施設単位で「改善を待つ」のではなく、複数の手段を組み合わせた中長期的な人材確保戦略が必要です。

Q. 外国人介護士の採用にかかるコストの目安を教えてください。

在留資格の種類や採用方法(在日採用か海外からの招聘か)によって大きく異なります。費用の内訳と相場については 受入れコストの解説記事 で詳しく紹介しています。ユアブライト株式会社では完全成功報酬型(内定時のみ課金・初期費用0円〜)での紹介が可能です。

Q. 小規模施設でも特定技能介護の受入れはできますか?

特定技能介護には受入れ施設の規模に関する制限はありません。ただし、少人数体制の施設ほど1人の離職が現場に与える影響が大きいため、受入れ前の環境整備と定着支援の重要性がより高くなります。規模に関わらず、受入れ体制の準備が成否を左右します。

Q. 介護ロボットやICT導入で人手不足は解決できますか?

介護ロボットやICTは職員の身体的負担軽減や記録業務の効率化に一定の効果があります。ただし、導入・教育コストを加味すると単独での人員不足解消には至らないケースがほとんどです。採用・定着策と並行して進める補完的な手段として位置付けるのが現実的です。

Q. 処遇改善加算をうまく活用できていない場合、何から見直すべきですか?

まず現在の算定区分と活用率を確認し、上位区分への移行要件を整理することをお勧めします。厚生労働省の「介護職員処遇改善加算等に関するQ&A」が参考になります。加算を最大限活用することで採用競争力の改善にも直結します。

まとめ:施設長が今すべきこと

介護の人手不足は2026年時点で既に構造的な問題として施設運営に影響しています。「求人を出せばいつか埋まる」という前提は成り立たなくなっています。

現状把握(数字の見える化)から始め、採用基準の整備、定着支援の仕組み化、そして外国人介護士を含む多様な人材の活用を組み合わせた複合的な戦略が求められます。外国人介護士の活用は、準備次第で確実に定着の実績が生まれる選択肢です。「一度試みたが難しかった」という施設の多くは、受入れ前の環境整備が不十分だったことが根本原因です。2040年に向けたギャップを自施設のスケールで考えたとき、今から動き出すことが競争優位につながります。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、特定技能介護・在留資格「介護」の人材紹介を行っています。17万人超の在日外国人データベースから貴施設に合う人材をご紹介します。初期費用・運用費用は 0 円〜、内定時のみ費用が発生する完全成功報酬型です。

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参考文献

  • 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
  • 厚生労働省「令和5年度 介護従事者処遇状況等調査」
  • 公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」
  • 出入国在留管理庁「在留外国人統計(2024年10月末時点)」
  • 総務省統計局「人口推計」
ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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