外国人介護士の申し送り|現場のつまずきと施設の改善策7選

「日本語はそこそこ話せるのに、申し送りだけが不安で…」。外国人介護士を受け入れた施設からよく聞かれる声です。

申し送りは、介護現場における情報の命綱です。夜勤から日勤へ、日勤から夕勤へと引き継がれる利用者の体調変化・ケア方針・緊急対応の経緯は、次のスタッフが安全なケアを続けるための前提です。ところが、外国人介護士が在籍する現場では、申し送りの場で「伝えたつもり・聞いたつもり」のすれ違いが生まれやすくなっています。日本語能力試験(JLPT)N2 を持っていても、介護現場固有の専門用語・婉曲表現・記録の慣習は試験には出ないためです。

この記事でわかること

  • 外国人介護士が申し送りでつまずく主な5つの理由
  • 申し送りの質を高めるために施設が今すぐ実践できる改善策7選
  • 公的な日本語サポート制度と、定着率への具体的な影響

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申し送りとは何か:介護現場における役割と重要性

介護現場における申し送りとは、勤務シフトの切り替わりに際して、利用者の状態・変化・注意事項を次のスタッフへ引き継ぐ業務プロセスです。口頭での申し送りと、申し送りノートや電子ケア記録への記載を組み合わせる形が一般的です。

申し送りに含まれる主な情報は次のとおりです。

  • 利用者のバイタルサイン(体温・血圧・SpO2 など)
  • 食事・水分摂取量
  • 排泄状況(量・回数・性状)
  • 転倒リスク、皮膚トラブル、疼痛の変化
  • 医師・看護師からの指示内容(内服変更・処置追加など)
  • 家族からの連絡事項
  • スタッフ間の業務引き継ぎ(送迎変更・レクリエーション準備など)

これだけの情報を限られた時間内で正確に伝達・受領するためには、専門語彙の理解・日本語の聴き取り力・記録に使われる書き言葉の習得が必要になります。外国人介護士にとって申し送りは、日本語能力と介護の専門知識が交差する、現場でも難度の高い業務場面の一つです。

申し送りで情報が欠落した場合、利用者の安全や尊厳に直結するリスクが生じます。外国人介護士を「いきなり口頭申し送りに参加させる」方針のまま仕組みを整えていない施設では、スタッフ本人が強いストレスを感じながら就労を続けることになりがちです。

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外国人介護士が申し送りでつまずく5つの理由

弊社ユアブライト株式会社が、特定技能「介護」および在留資格「介護」の人材を紹介した施設の担当者へのヒアリングをもとに、申し送り場面で繰り返し指摘される課題を5つに整理しました。

1. 業界固有の専門用語と施設内略語

「バイタル」「ADL 低下」「プラン変更」「ヒヤリハット」「リスクマネジメント」など、介護現場では医療・福祉由来の専門語が日常的に使われます。JLPT N2 を保有していても、これらは試験範囲外の語彙です。さらに施設ごとに「○○さんは夜間コールが多め」「今日の入浴対象は3名」のような固有の省略表現が存在することもあり、入職直後の外国人介護士には文脈の解読が難しい状況が生まれます。

2. 口頭申し送りのスピードと地域の言い回し

日本人スタッフが互いに慣れたスピードで話す口頭申し送りは、日本語を第二言語として学んだ外国人介護士には聞き取りが困難な場面があります。特に地方施設では地域特有の言い回しが交じることがあり、標準語ベースで学習した外国人介護士が戸惑う例も少なくありません。

3. 婉曲表現と深刻度のニュアンス

「〇〇様が少し気分がすぐれないご様子で」「お食事のほうが進まなくて…」といった婉曲的な表現は、直接的なコミュニケーションが一般的な文化で育った外国人介護士には、その重大性が伝わりにくいことがあります。「『少し』と言っているが実は緊急度が高い」という行間の読み取りは、文化的な慣れに依存するためです。逆に、外国人介護士が状況を率直に伝えようとすると、日本人スタッフが「言い方が強い」と感じることもあります。この双方向のズレは、 外国人介護士とのコミュニケーション改善ガイド で詳しく解説しています。

4. 書き言葉と話し言葉の乖離

「〇〇にて対応、様子観察継続」「下肢浮腫増悪傾向あり、要注意」のような申し送りノート特有の書き言葉は、日本語学習カリキュラムでは一般に扱われません。記録を書く力は会話力とは別のスキルセットであり、体系的なトレーニングなしに習得するのは難しい領域です。

5. 非言語コミュニケーションの読み取り

日本の職場では、声のトーン・間・視線・表情が多くの文脈情報を担います。申し送り中に「これは実は深刻な状況です」というニュアンスが非言語で表現されても、文化的な読み取りに慣れていない外国人介護士には伝わらないことがあります。これは能力の問題ではなく、文化的な習慣の違いに起因するものです。

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実際に起きたトラブルと、施設が得た教訓

弊社が紹介した外国人介護士が就労する関東の通所介護施設では、入職直後のベトナム人介護士(仮名:チャン・ティ・ランさん)が口頭申し送りで内服薬の変更情報を聞き取れず、日中の対応に影響が出た事例がありました。幸い健康被害は生じませんでしたが、施設長は「口頭確認だけに頼っていたことに無理があった。記録と口頭のダブルチェックをルール化すべきだった」と振り返っています。

別の特別養護老人ホームでは、夜勤を担当した外国人介護士が利用者の体調変化を申し送りノートに丁寧に書いたものの、施設で定型化された略語を使わなかったため、日本人スタッフが「記録が不完全」と受け取り、必要な引き継ぎが十分に機能しなかったケースがあります。これは外国人介護士の力量の問題ではなく、「記録の型」が入職前に共有されていなかったことが原因です。

どちらの事例に共通するのは、申し送りの仕組みを「日本人スタッフが標準」として設計していると、外国人介護士が安心して参加できる構造になりにくいという点です。仕組みを整えることは施設側の責任です。

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施設が今すぐ実践できる申し送り改善策7選

外国人介護士が申し送りに自信を持って参加できるようにするために、実際の施設で効果が確認された方法を7つ紹介します。大規模な設備投資ではなく、工夫と意識の転換で実施できるものが中心です。

① 申し送りテンプレートの標準化

「バイタル → 食事・水分 → 排泄 → 皮膚・転倒リスク → 特記事項」という固定フォーマットを記録用紙または電子記録システムに設定します。テンプレートがあることで、外国人介護士は「何を書くべきか」「何を聞くべきか」が明確になり、情報の取りこぼしも防げます。記録の標準化は日本人スタッフの業務効率化にも同時に貢献します。

② 施設版ルビ付き用語集の整備

施設で日常的に使う専門語・略語・固有表現を A4 1 枚程度にまとめ、読み仮名と簡単な説明、可能であれば英語または母国語の訳語を加えた「施設オリジナル用語集」を作成します。入職時に手渡し、新しい表現が加わるたびに随時更新することで、外国人介護士の自己学習ツールとして機能します。

③ 絵文字・図の補助的活用

「食事摂取量 50% → 🍽️ 50%」「転倒注意 → ⚠️」のように、絵文字や記号を補助的に用いる施設があります。すべての記録に使う必要はなく、外国人介護士が記録を書く・読む場面に限定して活用します。視覚的な情報補完として機能し、入職初期の理解を助ける効果が報告されています。

④ 口頭申し送りのスピード・復唱ルールの設定

外国人介護士が在籍するシフトの申し送りでは、「ゆっくり・短文・復唱確認あり」のルールを設けます。受け手が復唱することで、聞き取れなかった箇所をその場で補正できます。このルールは外国人介護士のためだけでなく、申し送り全体の精度向上にもつながります。

⑤ OJT でのシャドーイング期間の設定

入職後 1 ヶ月程度は、先輩スタッフの申し送りを「観察・聴き取りに集中する期間」として位置づけます。慣れてきた段階で補助記録の担当へ移行し、次のステップで申し送りの一部を担当する、と段階的に移行します。「いきなり一人でやる」ではなく段階を踏むことで、自信と正確性が同時に育ちます。

⑥ ICT・音声メモの活用

口頭の申し送りを録音し、外国人介護士が後から聞き返せる環境を整えた施設では、「聞き取れなかった部分を復習できる」として定着支援の効果が報告されています。実施にあたっては、個人情報保護の観点から録音範囲と管理ルールを施設として事前に定めることが前提です。

⑦ 週次の 1on1 フィードバック面談

外国人介護士と担当 OJT トレーナーが週 1 回 15 分程度、「申し送りで理解できなかったこと」「記録の書き方で迷ったこと」を話し合う場を設けます。問題を抱えたまま 1 ヶ月が過ぎると不安が蓄積して離職リスクが高まるため、週次でリセットする仕組みが有効です。面談記録を残すことで、成長の可視化にも役立ちます。

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特定技能制度と登録支援機関が担う日本語サポートの役割

特定技能「介護」で就労する外国人介護士には、受入れ機関または登録支援機関が 1 号特定技能外国人支援計画に基づいた日本語学習支援を提供することが求められています( 出入国在留管理庁「特定技能制度の概要」 )。この仕組みを活用して、介護申し送りに特化した業務日本語のプログラムを組む施設・支援機関が増えています。

また厚生労働省は、外国人介護人材の受入れ促進策の一環として日本語学習支援の枠組みを継続的に整備しています( 厚生労働省「外国人介護人材受入れの仕組み」 )。EPA 介護福祉士候補者向けの日本語支援に始まり、現在では技能実習・特定技能・在留資格「介護」それぞれのルートで就労する外国人介護士を対象とした支援が整備されています。

施設が実施する申し送り改善の取り組みと、登録支援機関が提供する業務日本語研修を組み合わせることで、より短い期間での習熟が期待できます。登録支援機関の選定や受入れ全体の準備については、 外国人介護士の受入れ全体ガイド もあわせてご参照ください。

なお、特定技能「介護」の制度概要や試験要件については、 特定技能介護の制度ガイド で詳しく解説しています。

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申し送りの改善が定着率に直結する理由

外国人介護士が「申し送りの内容が理解できない」「記録を正しく書けているか不安」という状態のまま就労を続けると、職場への自信と帰属意識が低下し、離職につながりやすくなります。弊社のヒアリングでは、「言葉の壁より、仕組みの壁のほうが大きかった」という声が外国人介護士本人から聞かれることがあります。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社の支援事例では、入職後 3 ヶ月以内に申し送りテンプレートの整備・用語集の提供・OJT による段階的な移行を実施した施設のほうが、そうでない施設と比べて外国人介護士の在籍継続率が安定している傾向があります。

「自分の仕事が正確に次のスタッフへ伝わった」「記録を読み取れた」という実感は、仕事への自信と職場満足度を支える根幹です。申し送りを「業務の一部」として捉えるだけでなく、「外国人介護士が現場に根付くための橋渡し」と位置づけることが、施設長・管理職に求められる視点です。

外国人介護士の感情表現や職場内の関わり方については、 ベトナム人介護士の感情表現と職場での接し方 もあわせてご参照ください。外国人介護士を受け入れる施設が増えるなかで、申し送りの仕組みを整えることはケアの質の維持と人材定着の両方を同時に実現する取り組みといえます。

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外国人介護士の受入れを検討していますか?

「申し送りが不安で、外国人介護士の受入れを一歩踏み出せない」というご相談は、施設長から頻繁に寄せられます。ユアブライト株式会社では、特定技能「介護」・在留資格「介護」の人材紹介に加え、入職後の定着支援として母国語スタッフによる面談・通訳対応を実施しています。

17 万人超の在日外国人データベースから、貴施設の規模・シフト体制・ケアの種別に合う人材をご提案します。初期費用・運用費用は 0 円から、内定時のみ費用が発生する完全成功報酬型です。

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よくある質問(FAQ)

Q. 外国人介護士が申し送りを一人で担当できるようになるまで、どのくらいかかりますか?

個人差がありますが、テンプレートの整備と OJT によるシャドーイング期間を設けた施設では、入職後 2〜3 ヶ月で申し送りの大部分を担当できるようになるケースが多く見られます。JLPT N2 相当の日本語力を持つ外国人介護士であれば、業界専門用語の習得が主な課題となるため、施設版用語集の整備が特に有効です。

Q. 申し送りノートのフォーマットを変えるだけで、定着に違いは出ますか?

はい、記録フォーマットの標準化は外国人介護士にとって大きな助けになります。「何を書くか」「どの順番で書くか」が明確になることで、記録を書く心理的な負担が軽減され、情報の取りこぼしも防げます。記録の型を全スタッフで共有することは、日本人スタッフの業務効率化にも同時に貢献するため、施設全体で取り組む意義があります。

Q. 登録支援機関は申し送りに特化した日本語研修も対応しますか?

登録支援機関によって対応内容は異なりますが、業務日本語・介護専門語彙を含む研修プログラムを提供している機関はあります。受入れ前に登録支援機関の研修内容を確認し、施設内での申し送り訓練と組み合わせることをお勧めします。弊社ユアブライトでは母国語スタッフによる入職後面談を実施しており、申し送りに関する不安の早期解消を支援しています。

Q. 外国人介護士が申し送りを誤解した場合、施設の責任はどうなりますか?

業務上の情報伝達の不備による事故は、外国人・日本人を問わず施設の管理責任が問われる可能性があります。だからこそ、申し送りの仕組みを整備し、確認復唱・ダブルチェック・記録の二重管理といったプロセスを設けることが施設側の重要な対応です。「外国人スタッフが聞き取れなかったから」という理由だけでは、管理体制の不備として評価される場合があります。

Q. ベトナム以外の国籍の介護士にも同じ対策は有効ですか?

基本的な方針は国籍を問わず有効です。ただし、言語特性(例:インドネシア語の敬語体系、ネパール語の文字体系)によって日本語習得の難易度は異なります。施設が用語集や研修を整備する際、外国人介護士本人の母語・文化背景に応じた調整を加えることで、定着支援の効果はさらに高まります。国籍別の文化的背景については、担当の登録支援機関や紹介会社に相談することが近道です。

ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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