2024年度介護報酬改定と外国人介護士受入れ|施設長・採用担当者向け実務ガイド

2024年度(令和6年度)介護報酬改定は、全体改定率+1.59%という数字だけ見るとプラスに聞こえます。ただし、実際の現場では「加算の取得要件が厳しくなった」「LIFEへの対応が間に合っていない」「BCPの記録整備が追いつかない」という声が後を絶ちません。外国人介護士を受け入れている施設では、処遇改善加算の算定から外国人スタッフを除外してしまうなど、独自の落とし穴も見えてきています。

この記事では、2024年度介護報酬改定の主要変更点を整理したうえで、外国人介護士を受け入れる施設が直面しやすい失敗パターンと具体的な回避策を解説します。2027年度(令和9年度)の次回改定に向けた実務チェックリストも付けていますので、施設長・採用担当者の方にそのままご活用いただけます。

2024年度介護報酬改定の全体像

厚生労働省が2024年1月22日に公表した「令和6年度介護報酬改定の概要」によると、今回の改定の主な柱は次の4点です。

処遇改善加算の一本化・拡充

従来、介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の3つに分かれていた加算が「介護職員等処遇改善加算」として一本化されました。新加算はⅠ〜Ⅳの4区分で、最上位のⅠを取得するには「月額賃金改善要件」に加え、「キャリアパス要件」「職場環境等要件」をすべて満たす必要があります。旧加算から移行した施設も要件の再確認が必要で、移行手続きを失念したまま旧区分で申請しようとするケースが実際に起きています。

LIFE(科学的介護情報システム)を活用した加算の拡充

科学的介護推進体制加算をはじめ、LIFEへのデータ提出を要件とする加算の対象範囲が広がりました。データを提出するだけでは不十分で、アウトカムをケアプランに反映させたというPDCAの記録が実地指導で確認されるようになっています。「提出はしているが記録がない」という施設は要注意です。

BCP義務化の完全施行

感染症・自然災害に関する業務継続計画(BCP)の策定義務は2021年度改定で導入されましたが、3年間の経過措置が終了し、2024年4月以降は策定・研修・訓練の記録保存が完全に義務化されました。未整備の施設は減算リスクを抱えることになります。

医療介護連携・在宅支援の強化

訪問看護・訪問リハビリとの連携加算の拡充、退院直後の集中的な支援評価など、医療と介護の連携をさらに深める改定が行われています。外国人介護士が在宅系サービスで従事するケースも増えており、医療職との連携コミュニケーション能力が一層問われる場面が増えています。

介護現場でよくある相談

ともにケアを運営するユアブライト株式会社には、介護施設の施設長・人事担当者から毎月多くの相談が寄せられます。2024年度改定後に特に増えているのは次のような内容です。

「加算を取り続けるための事務作業が増えすぎて、現場スタッフが疲弊している」

改定のたびに加算の要件が複雑化し、記録・書類の量が増える傾向にあります。外国人介護士が増えている施設では、書類を日本語で作成するだけでなく多言語での周知も求められるため、管理負担が二重になるという声が少なくありません。

「外国人介護士の給与を上げたいが、処遇改善加算の計算にどう組み込めばいいか分からない」

処遇改善加算の対象職員の範囲や給与改善の配分方法について、外国人介護士の雇用形態(特定技能・在留資格「介護」など)との関係が整理できていない施設が多く見られます。「特定技能だから別扱いかと思っていた」というご担当者の声もよく聞かれます。

「LIFEシステムの操作を外国人介護士に教える余裕がなく、日本人スタッフに業務が集中している」

LIFEへのデータ入力を外国人介護士が担当できるよう多言語の操作マニュアルを用意している施設はまだ少数派です。結果として入力業務が特定のスタッフに偏り、チームの公平感が損なわれることもあります。

こうした相談の背景には、「介護報酬改定への対応」と「外国人介護士の受入れ・定着」が別々の課題として管理されているという構造的な問題があります。実際には両者は密接に絡み合っており、一体的に取り組む視点が不可欠です。

受入れ施設の失敗パターンと回避策

複数の施設の事例をもとに、外国人介護士を受け入れている(または受け入れを検討している)施設で多い失敗パターンをまとめます。

失敗パターン1:処遇改善加算の一本化に気づかず旧区分で更新申請を出してしまう

2024年4月の一本化に際して、都道府県への移行届出・算定開始届出を所定の期限内に提出する必要がありました。「毎年同じように更新すればいいと思っていた」という施設が一定数あり、旧加算の区分のまま算定を続けようとした結果、都道府県から訂正を求められるケースが発生しています。

回避策: 各都道府県の介護給付費担当部局が発出した「処遇改善加算移行に関する通知」を必ず確認し、提出期限・様式を担当者レベルで台帳管理する。外国人介護士が多く在籍する施設では翻訳・通訳サポートに費用がかかるため、余裕をもって社会保険労務士に確認を依頼することを推奨します。次回改定でも同様の移行手続きが発生する可能性があるため、この台帳管理の仕組み自体を定着させておくことが重要です。

失敗パターン2:LIFEデータを提出しているが活用のエビデンスが不足している

LIFE対応加算の算定要件として、データを提出しているだけでは不十分で、その結果をケアへ反映させているエビデンスが必要です。「入力はしているが活用の記録がない」という状態は、実地指導でそのまま指摘事項になります。

回避策: LIFEデータ提出後のPDCAサイクル(データ確認→ケアプラン修正→実施→再評価)を記録として残す。多職種会議の議事録にLIFEデータを参照した旨を明記することが実地指導対策として有効です。

失敗パターン3:BCP策定は完了したが研修・訓練の記録が未整備

「BCPのドキュメントは作った」という施設でも、実地指導で「研修・訓練の実施記録がない」と指摘されるケースが複数あります。義務化の要件は策定だけでなく、定期的な研修と年1回以上の訓練の実施、その記録保存まで含みます。

回避策: 年間スケジュールに研修・訓練の日程をあらかじめ組み込む。実施後は参加者リスト・内容・理解度確認の方法を記録する。外国人介護士が参加した場合は、母国語または平易な日本語での理解確認も記録に含めることを推奨します。

失敗パターン4:外国人介護士の給与を処遇改善加算の計算から除外する

「特定技能だから処遇改善の対象外」「実習生扱いで別管理していた」という誤解が稀に見られます。特定技能介護・在留資格「介護」・技能実習「介護」(2号修了以降)のいずれも、介護保険事業所に在籍して直接介護業務に従事していれば処遇改善加算の対象職員に含まれます。対象から漏れると加算の算定要件を満たさず、遡及返還を求められる可能性があります。

回避策: 加算申請時の対象職員リストを作成する段階で、在籍する外国人介護士全員の雇用形態・業務内容を確認し、社会保険労務士等と算定の適否を照合する。

採用担当者が見落としやすいポイント

処遇改善加算の取得と外国人介護士の採用・定着は、採用担当者レベルでは別々の業務として扱われがちですが、実務上は連動しています。

見落としポイント1:採用時の給与提示が処遇改善計画と整合していない

処遇改善加算Ⅰの取得には月額賃金改善要件があります。新規採用(外国人介護士含む)の給与設計が、加算申請時に届け出た賃金改善計画と乖離しているケースが見受けられます。「採用できたが、提示給与が計画を下回り計画修正が必要になった」という事態は、申請の整合性だけでなく入職者との信頼関係にも影響します。採用開始前に人事部門と財務・総務部門が賃金改善計画を共有することが不可欠です。

見落としポイント2:キャリアパス要件の周知が外国人介護士に届いていない

加算Ⅰのキャリアパス要件では、資格取得支援や昇給の仕組みが全職員に説明・周知されていることが前提となります。日本人職員には入職時に説明しているものの、外国人介護士には書面翻訳や通訳を介した説明が省略されているケースがあります。介護福祉士試験の受験支援制度・昇給基準・評価フローを母国語または平易な日本語で文書化し、入職時に手渡すことを習慣化してください。キャリアパスが伝わっていないと、定着率の低下にも直結するんです。

見落としポイント3:入社後のLIFE研修が業務配置と連動していない

LIFE対応の加算を取得している施設で、外国人介護士が入社してから1〜2か月が経過してもLIFEシステムの操作を習得しておらず、チームの入力業務に支障が出ているケースがあります。採用決定から着任までの研修計画に、LIFE操作研修を必ず組み込む仕組み化が必要です。

受入れ費用の内訳と試算方法 もあわせて参照いただくと、こうした研修・多言語対応コストを含めた受入れ総コストの試算に役立ちます。

2027年次回改定に向けた実務チェックリスト

2027年度(令和9年度)の次回介護報酬改定に向けた審議は、2026年度中に本格化します。2040年問題(団塊ジュニア世代が65歳以上となり介護需要がピークを迎える)を背景に、社会保障審議会介護給付費分科会では以下の論点が主要テーマとして浮上しています。

  • 介護人材の確保・定着に向けた処遇改善のさらなる拡充
  • 外国人介護士の受入れ環境整備・多言語対応支援への評価
  • ICT・介護ロボット・AI活用を評価する加算の整備
  • 医療介護連携のさらなる推進(在宅医療との協働)
  • LIFE活用の対象範囲の拡大

この流れを踏まえ、施設長・採用担当者が今から取り組んでおくべき事項をチェックリストにまとめます。

施設長の介護報酬改定対応フロー(次回2027年改定を見据えた準備)

改定概要の確認(厚労省・都道府県通知)から始まり、自施設への影響試算(加算区分変更・単価変動)を行います。次に申請・届出の期限管理台帳への登録(担当者指名)を済ませ、外国人介護士を含む全職員への周知・研修へと進みます。その後、PDCA記録の整備(実地指導対応)を整え、最後に次回改定審議のモニタリング開始(分科会資料の定期確認)を継続的に行います。このフローを担当者間で共有し、改定のたびに実行できる体制を整えることが安定した施設経営の基盤となります。

処遇改善・加算関連

  • [ ] 現在取得している処遇改善加算区分(Ⅰ〜Ⅳ)の確認
  • [ ] 加算Ⅰ未取得の場合、キャリアパス要件・職場環境要件の充足状況の棚卸し
  • [ ] 外国人介護士を含む全職員の賃金改善実績の記録整備
  • [ ] 次回申請・更新に備えた職場環境要件の取組記録の蓄積
  • [ ] 採用時の給与提示と賃金改善計画の整合性確認フローの確立

LIFE・ICT関連

  • [ ] LIFEへのデータ提出が定期的に行われているかの確認
  • [ ] データ提出後のPDCAサイクル(ケアプランへの反映・会議録への記録)の機能確認
  • [ ] 外国人介護士のLIFEシステム操作研修の実施と記録の確認
  • [ ] 介護記録電子化(タブレット・専用端末)の整備状況の確認

BCP・安全管理関連

  • [ ] 感染症BCP・自然災害BCP最新版の策定状況の確認
  • [ ] 年1回以上の訓練実施と記録保存状況の確認
  • [ ] 外国人介護士向けの多言語版または平易な日本語版BCP資料の整備
  • [ ] 緊急連絡先・避難行動の訓練に外国人介護士が参加しているかの確認

人材確保・外国人受入れ関連

  • [ ] 採用計画に特定技能介護・在留資格「介護」の活用が含まれているかの確認
  • [ ] 外国人介護士の給与設計と処遇改善加算の賃金改善計画の整合性確認
  • [ ] 外国人介護士向けのキャリアパス説明資料と介護福祉士試験受験支援制度の周知
  • [ ] 入社後研修計画(LIFE操作・BCP・申し送り方法)の多言語対応状況の確認

よくあるご質問

Q. 2024年度介護報酬改定で、改定率がプラスでも実収入が減ることはありますか?

あります。加算の取得区分が下がった施設や、新たに義務化された要件(LIFE提出など)の対応コストが収益増を上回った施設では、実質的な収支改善が限定的なケースがあります。改定率のプラス・マイナスと、自施設の加算取得状況・対応コストは切り離して試算することが重要です。

Q. 特定技能介護の外国人介護士は処遇改善加算の対象になりますか?

なります。特定技能介護・在留資格「介護」・技能実習「介護」(2号修了以降)のいずれも、介護保険事業所に在籍して直接介護業務に従事している場合は処遇改善加算の対象職員です。在留資格の種別を理由に対象外とすることはできず、申請書類の対象職員リストに必ず含めてください。

Q. LIFEへのデータ提出を始めるには何から準備すればいいですか?

まず厚生労働省が運営するLIFEシステムへの利用登録とアカウント発行が必要です。次に、入力項目(ADL・口腔・栄養・認知機能等)の評価タイミングとアセスメント担当者を決め、操作マニュアルを整備します。外国人介護士が入力を担当する場合は、日本語マニュアルに加え、母国語または平易な日本語で書かれた手順書を用意することを推奨します。難しく考えなくて大丈夫です。まずはアカウント発行と担当者の明確化から始めてみてください。

Q. BCP義務化への対応が不十分だった場合、どのようなリスクがありますか?

実地指導での指摘事項となる可能性があります。BCP未策定・研修未実施が確認された場合、改善指導が入り、関連加算の返還を求められるケースもあります。加えて、実際に感染症や災害が発生した際にサービス継続が困難になるという現場リスクも深刻です。BCP対応は法令遵守であると同時に、利用者・入居者の安全を守るための経営上の優先事項です。

Q. 2027年度改定で外国人介護士の受入れに関する加算は新設されますか?

2026年5月時点では審議中です。ただし、深刻化する介護人材不足と外国人介護士の活用拡大は政策的な方向性として明確であり、受入れ環境整備・多言語対応研修への評価が議論の俎上に乗っています。厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会の審議資料(厚労省ウェブサイトで公開)を定期的に確認することを推奨します。

外国人介護士の受入れを検討中ですか?

「介護報酬改定への対応と並行して人材確保を進めたいが、外国人介護士の受入れプロセスが分からない」「処遇改善加算の要件を満たす給与水準で採用できる人材はいるか」というご相談を多くいただきます。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、17万人超の在日外国人データベースから、特定技能介護・在留資格「介護」・技能実習修了者を介護施設にご紹介しています。初期費用・運用費用は0円〜の完全成功報酬型で、内定時のみ費用が発生します。入社後も母国語スタッフによるフォローアップ体制を整えており、定着支援まで一貫してサポートします。

参考文献

ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
NEXT STEP

この記事を読んだあとの、次の一歩

あなたの立場にあわせて、次に読みたい記事・相談先をご用意しています。

もっと知りたい

文化の違いをもっと知る

食文化・家族観・宗教観など、外国人介護士を理解するための記事を集めました。

関連記事を見る
職場のヒント

一緒に働く立場の方へ

シフト・申し送り・チーム連携。現場で実際に使えた工夫を、記事でまとめました。

現場のヒントを読む
採用ご検討の方へ

受入れを相談してみる

施設の状況にあわせて、受入れの流れ・費用・期間を無料でご案内します。

無料で相談する
Mail
ともにケアからWEBでお問い合わせ
今すぐメールで
お問い合わせ
Tel
ともにケアからお電話でお問い合わせ
03-6908-6143
営業時間 9:00 - 18:00 (土日祝 休み)