外国人介護士の接し方|定着率が上がる現場コミュニケーション術

「外国人介護士をどう接すればよいかわからない」「指示がうまく伝わらない」「入社してすぐ辞めてしまう」

こうした声は、外国人介護士の受入れを始めたばかりの施設から毎月のように届きます。

日本の介護現場は深刻な人材不足が続いており、外国人材の活用はもはや選択肢ではなく、多くの施設にとって経営上の必須課題となっています。ところが、受入れ体制が整わないまま採用だけを進めると、早期離職や現場の摩擦が繰り返され、長期的なコストが採用費を大きく上回ってしまいます。

この記事では、介護施設の施設長・採用担当者が今日から実践できる「外国人介護士との接し方」を、文化・宗教・言語の違いを踏まえながら具体的に解説します。失敗しがちなパターンと回避策、実務チェックリストも掲載しているので、施設内でぜひ共有してください。

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なぜ今、外国人介護士の受入れが急務なのか

厚生労働省の推計によると、2040年には介護職員の需要が約280万人に達する一方、国内の供給は約210万人にとどまり、約70万人の不足が生じる見通しです(2023年度「第9期介護保険事業計画」)。

こうした背景から、外国人介護士の在留資格別の受入れ状況も拡大しています。出入国在留管理庁の2024年6月時点のデータでは、特定技能「介護」の在留者数は約3万3,000人を超え、前年比で約40%増加しています。技能実習修了者や在留資格「介護」を持つ介護福祉士も含めると、介護現場で働く外国人は着実に増えています。

人材の確保は進んでいても、定着が課題です。介護労働安定センターの調査では、介護職全体の離職率は年間約14%ですが、外国人介護士については受入れ体制の不備を主因とした早期離職が相当数発生していることが、現場のヒアリングから浮かび上がっています。

外国人介護士を長く活躍させるためには、採用の場面だけでなく、入社後の「接し方」こそが最も重要な投資なのです。

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介護現場でよくある相談

ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、外国人介護士の紹介・支援を通じて、全国の介護施設から多くの相談を受けています。以下は特によく寄せられるケースです。

ケース1:「挨拶はするのに、自分から動いてくれない」

「言われたことはやるが、見て気づいたことをやってくれない」という相談は最も多いタイプです。ベトナム・インドネシア・フィリピンなど多くのアジア諸国では、「上司の指示がない行動はしない方が失礼にあたらない」という文化規範があります。これは積極性がないのではなく、「指示をきちんと守る誠実さ」の表れです。解決策は「気になったことはどんどん声に出してください」と明示的に許可を出すことです。

ケース2:「間違えても『できました』と言う」

「できていないのに『できました』と報告してくる」というケースも頻繁に聞かれます。多くの場合、「失敗を認めることは相手への失礼にあたる」という価値観が背景にあります。「間違いを指摘されることを気にしなくていい。むしろ早めに言ってくれる方が助かる」という雰囲気をチームで作ることが先決です。

ケース3:「突然、連絡なしで休んだ」

無断欠勤ではないかと心配になるケースですが、実際には「休む連絡の仕方(電話ではなくLINEでいい、など)が伝わっていない」ケースが多いです。日本では当たり前の「欠勤連絡のルール」も、明文化されていなければ伝わりません。ルールブックや連絡方法の多言語化が効果的です。

ケース4:「礼拝の時間を要求された。どう対応すればいい?」

イスラム教を信仰するインドネシア・バングラデシュ出身者などから礼拝時間の配慮を求められたとき、対応に迷う施設は少なくありません。休憩時間との調整や礼拝スペースの確保など、採用前の段階で本人と合意しておくことが双方にとって最善です。宗教的配慮は「特別扱い」ではなく「合理的配慮」として法的にも位置づけられており(労働施策総合推進法の精神)、事前の話し合いが摩擦ゼロの近道です。

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外国人介護士との接し方の基本5原則

現場のコミュニケーションで実践できる基本原則を5つにまとめました。どれも今日から使えるものばかりです。

原則1:「なぜ」を必ず説明する

日本の介護現場では「見て覚える」文化が根強く残っていますが、外国人介護士にとってこのアプローチはほぼ機能しません。「なぜそうするのか」という理由を説明してから指示を出すことで、業務への納得感と記憶の定着が大幅に改善します。「感染予防のため、手袋はこの順番でつけます」というように、目的を1文で添えるだけで理解度が変わります。

原則2:「わかりましたか」と聞かない

「わかりましたか?」という質問に「わかりました」と答えてしまうのは、多くのアジア系文化で「ノー」と言うことへの強い抵抗感があるためです。理解を確認するときは「ではやってみせてください」「次はあなたが担当してください」という行動ベースの確認に変えましょう。

原則3:個別フィードバックは1対1で

大勢の前での指摘や叱責は、日本人以上に強い屈辱感を与えることがあります。フィードバックは必ず1対1のタイミングで、「責める」ではなく「改善策を一緒に考える」スタンスで行いましょう。

原則4:小さな達成を言葉にして認める

「できて当たり前」という態度は、外国人介護士のモチベーションを急速に低下させます。「今日の申し送り、とてもわかりやすかった」「先週より手順が速くなったね」という具体的なポジティブフィードバックが、定着率に直結します。

原則5:文化・宗教の違いを「知識」として持つ

「なんとなく配慮する」のではなく、出身国ごとの主要な文化・宗教慣習について、受入れ担当者が事前にインプットしておくことが大切です。たとえばイスラム教徒の豚肉・アルコール禁忌、ヒンドゥー教徒の牛肉禁忌など、食事の場面でのトラブルは事前の確認だけで防げます。

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受入れ施設の失敗パターンと回避策

外国人介護士の早期離職を招きやすい施設側の失敗パターンを3つ挙げます。どれも「気づかないうちに繰り返している」ことが多い落とし穴です。

失敗パターン1:「日本人と同じ扱いをしているのになぜ離職するのか」

「差別せずに同じ扱いをしている」という姿勢は誠実ですが、それだけでは不十分です。「同じ扱い」は「同じ説明量・サポート量」を意味するわけではありません。外国人介護士には、日本の職場文化・介護の専門用語・生活インフラのサポートが日本人スタッフより多く必要です。「平等」と「公正」を混同しないことが、受入れ成功の第一歩です。

失敗パターン2:「チームになじめない」まま放置する

入社直後のペアリング(先輩との1対1のOJT体制)がない施設では、外国人介護士が職場で孤立しやすくなります。最初の1か月は特定の先輩スタッフが担当者となり、「何かあれば最初にこの人に聞く」という安心感を作ることが大切です。

失敗パターン3:配置転換の選択肢を用意していない

最初に配属したフロアや担当業務が合わなかったとき、柔軟な配置転換の仕組みが施設にあるかどうかが離職率に直結します。試用期間中に定期的に本人の感想を聞き、「別の配属も選択肢にある」と伝えることで、早期離職を防げることがあります。チームの雰囲気も含めて総合的に判断した配属が、入社後の活躍につながります。

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採用担当者が見落としやすいポイント

外国人介護士の採用フローで見落とされがちな重要ポイントを整理します。

見落とし1:在留資格の更新スケジュールを把握していない

特定技能「介護」は1年ごとの在留資格更新が必要です(上限5年)。更新の手続き支援を施設が行わない場合、本人が自力で対応できず、知らないうちに在留資格が失効するリスクがあります。採用後は更新スケジュールを人事システムで管理し、3か月前には登録支援機関と連携した手続きを開始することをお勧めします。出入国在留管理庁のポータルサイトでは在留資格の申請手続きを確認できるため、担当者は事前に目を通しておきましょう。

見落とし2:配属先の「相性」を重視していない

スキルや資格の確認はするが、「どのフロアのどのチームに入るか」という配置の相性を考えない施設が多いです。既存スタッフとの相性、業務の難易度、チームの雰囲気を総合的に判断した配属が、入社後の活躍につながります。面談や試用期間の観察を通じて多面的に評価することをお勧めします。

見落とし3:入社後フォローを「本人任せ」にする

「気になったら相談に来てください」という受け身の体制は、実際には相談が来ないまま離職を迎えることになりがちです。

入社から3か月以内は、「定期的に声をかける」「具体的なフィードバックを渡す」「生活面の困りごとも聞く」という積極的な関与が定着率に直結します。ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、入社後に母国語対応スタッフが定期面談を行う体制を設けており、こうした早期フォローが外国人介護士の定着に効果的であることを実感しています。

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実務チェックリスト:外国人介護士の接し方 確認ポイント

施設長・採用担当者がすぐ確認できる12項目です。「できている/要改善/未対応」で評価してください。

受入れ準備(4項目)

  • 出身国の主要文化・宗教慣習について、受入れ担当者が基本的な知識を持っている
  • ハラール食・礼拝スペースなど宗教的配慮の有無を確認済みである
  • 暗黙のルールを言語化した「職場文化ガイド」を整備している
  • 入社オリエンテーションで業務以外の「日本の職場文化」を説明している

コミュニケーション(4項目)

  • フィードバックは必ず1対1で行っている
  • 「なぜそうするのか」の理由を説明してから指示を出している
  • 理解確認を「わかりましたか」ではなく「やってみせてください」で行っている
  • 月に1回以上、個別面談(または母国語サポートあり)を実施している

定着支援(4項目)

  • 介護福祉士国家資格取得支援の仕組みを整えている
  • 外国人介護士のキャリアパスを明示している
  • 日本人スタッフへの文化理解研修を年1回以上実施している
  • 離職前のサイン(表情の変化・遅刻・ミスの増加)を記録・共有する仕組みがある

9項目以上できていれば定着の基盤は整っています。6項目未満の場合は、「コミュニケーション」と「定着支援」の2カテゴリを優先的に見直してください。

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よくある質問

Q. 外国人介護士に日本語でのコミュニケーションを求めてもよいですか?

業務上の日本語コミュニケーションは当然必要ですが、求めるレベルを適切に設定することが重要です。特定技能「介護」では日本語能力試験N4相当(介護日本語評価試験を含む)が要件とされており、日常会話レベルの日本語は持っています。申し送りや急変時の報告など高度な場面では、翻訳アプリ・絵カード・手順書の多言語化といった補助ツールを組み合わせることをお勧めします。

Q. 外国人介護士が突然「辞めたい」と言ってきたとき、どう対応すればよいですか?

まず話をすべて聴くことが最優先です。「なぜ辞めたいのか」を責めずに引き出し、解決できる課題かどうかを一緒に確認します。多くの場合、コミュニケーションの誤解や、日本語で相談しにくい環境が背景にあります。母国語対応スタッフや登録支援機関に第三者として介在してもらう仕組みを、事前に整えておくことが最善の予防策です。

Q. 日本人スタッフが「外国人介護士は使いにくい」と言っています。どう対処すればよいですか?

「何が使いにくいのか」を具体的に聞き出すことが先決です。多くは「指示したことしかやらない」「空気を読まない」という内容です。これらは外国人介護士の問題ではなく、「指示の出し方」「期待値の言語化」という受入れ側の仕組みの問題です。日本人スタッフ向けに異文化コミュニケーション研修を実施し、双方向の理解を促すことが根本的な解決につながります。外国人介護士だけに適応を求める一方向の体制は、関係の摩擦を長期化させるリスクがあります。

Q. 技能実習と特定技能で、接し方は変わりますか?

基本的なコミュニケーションの原則は変わりませんが、在留資格による立場の違いは理解しておく必要があります。技能実習生は「実習計画」に基づく業務範囲の制約があり、特定技能は即戦力として幅広い業務に従事できます。特定技能の方が自律的な行動を期待されやすい分、「指示待ち」と感じたときのギャップも生じやすいです。在留資格ごとの権利と義務を現場担当者が把握しておくことで、不必要な摩擦を防げます。

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外国人介護士の受入れを検討中ですか?

「接し方のポイントはわかったが、自施設に合った人材をどう探せばよいかわからない」というご相談を多くいただきます。

ともにケアを運営するユアブライト株式会社では、特定技能「介護」・在留資格「介護」・技能実習修了者を中心に、17万人超の在日外国人データベースから貴施設に合う人材をご紹介しています。初期費用・運用費用は0円から、内定時のみ費用が発生する完全成功報酬型です。

入社後は母国語対応スタッフ(ベトナム語・ネパール語・インドネシア語・ミャンマー語など)による定期面談を行い、コミュニケーション面でのフォロー体制を施設と連携して整えます。「接し方」の問題は採用後も続く課題であり、支援体制の有無が定着率の差となって現れます。

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*参考資料:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の需給推計について」(2023年)/出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の推移」(2024年6月)/公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」(2023年度)*

ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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