はじめて外国人介護士を迎える施設へ -- 受入れ準備から定着までの全手順

介護人材の確保が年々難しくなるなか、外国人介護士の受入れを初めて検討する施設が増えています。しかしながら、'まず何から始めればいいのか''手続きにどれくらいの時間がかかるのか'と、全体像がつかめずに踏み出せないケースも少なくありません。そこで、特定技能'介護'を中心に、受入れの前提条件から手続きの流れ、定着支援までの全手順について解説します。

外国人介護士の受入れには何が必要?

外国人介護士の受入れには、前提条件の確認から就労開始まで概ね3~6か月の期間が必要です。対象施設の確認、受入れ機関としての体制整備、登録支援機関の選定、人材の募集と面接、雇用契約・支援計画の作成、在留資格の申請という流れで進みます。特定技能'介護'の在留者数は2025年10月末時点で約55,700人に達しており、5年間の受入れ上限135,000人に向けて今後も拡大が見込まれています。

なぜ今、外国人介護士の受入れが必要なのか?

外国人介護士の受入れは、もはや一部の先進的な施設だけの取り組みではなくなっています。その背景には、数字が示す深刻な人材不足の現実があります。

介護人材の不足は構造的な問題である

厚生労働省の'第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について'(2024年7月公表)によると、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされています。一方で、2023年度の介護職員数は約212.6万人にとどまり、前年度から約2.8万人の減少を記録しました。毎年約6万人規模の増員が必要な状況にもかかわらず、実際の増加ペースは年間1万人程度と言われています。こうした需給のギャップを国内人材だけで埋めることは、極めて難しくなっているでしょう。

特定技能'介護'の活用が急速に広がっている

出入国在留管理庁のデータによると、特定技能'介護'の在留者数は2023年12月末の約28,400人から、2025年10月末には約55,700人へと増加しました。わずか2年足らずで約2倍に拡大した計算です。2024年4月からの5年間で135,000人の受入れ上限が設定されており、今後も増加が見込まれるでしょう。こうした流れを踏まえると、早い段階で受入れ体制を整えておくことが大切です。

受入れの前に確認すべき条件は何か?

手続きに入る前に、自施設が受入れの要件を満たしているかを確認する必要があります。ここを見落としたまま準備を進めてしまい、途中でやり直しになるケースは意外と多いかもしれません。

対象施設には明確な範囲がある

特定技能'介護'で外国人材を受け入れられる施設には、介護保険法に基づく事業所であることなどの条件が設けられています。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、通所介護、グループホームなどが主な対象です。なお、2025年4月からは訪問介護事業所でも一定の条件のもとで受入れが可能となりました。自施設が対象に含まれるかどうか、まず確認しておくことをおすすめします。

受入れ機関としての要件を満たす必要がある

施設の種類だけでなく、受入れ機関としての体制面の要件も求められます。たとえば、過去に労働関係法令の重大な違反がないこと、外国人材への適切な支援体制を整備すること、特定技能外国人と日本人の同等報酬を確保することなどが条件となっています。また、特定技能外国人の受入れ後には、介護分野特定技能協議会への加入が義務づけられている点も見落としがちなポイントでしょう。

受入れ人数には上限がある

特定技能'介護'では、事業所ごとの受入れ人数に上限が設定されています。原則として、日本人等の常勤介護職員の総数が上限となります。そのため、常勤職員が10名の事業所であれば、最大10名までの受入れが可能という計算です。ただし、人数枠だけを基準にするのではなく、指導体制や生活支援の余力を踏まえて現実的な人数を判断することが大切です。

この段階で、登録支援機関のサポート内容や実績を十分に比較検討することが重要でしょう

受入れ手続きにはどれくらいの期間がかかる?

受入れの手続きは、開始から就労開始まで概ね3か月から6か月を要します。全体の流れを把握しておくことで、逆算したスケジュール設計が可能になるでしょう。

最初の1〜2か月は体制整備と人材選定に充てる

受入れの第一歩は、社内での方針決定と体制整備です。どの部署に何名を配置するか、指導担当者は誰にするかといった基本方針を固めたうえで、登録支援機関や人材紹介会社の選定に進みます。この段階で、登録支援機関のサポート内容や実績を十分に比較検討することが重要でしょう。'とりあえず紹介された機関に依頼した'という選び方が、後のトラブルにつながることも珍しくありません。

登録支援機関が決まったら、人材の募集と面接に移ります。海外在住の候補者の場合はオンライン面接が一般的です。この時点で候補者は、慣れない環境への期待と不安を同時に抱えている場合がほとんどでしょう。面接では技能や日本語力だけでなく、施設の理念や生活環境の情報を丁寧に伝えることで、入職後のミスマッチを防ぐことにつながります。

2〜4か月目は契約・申請手続きが中心になる

採用が決まると、雇用契約の締結、支援計画の作成、そして在留資格の申請へと進みます。支援計画は、入国前のガイダンスから生活オリエンテーション、定期面談の実施まで、10項目にわたる支援内容を具体的に定める書類です。この作成を登録支援機関に委託する施設が多い傾向にありますが、内容を施設側もしっかり理解しておく必要があります。

在留資格の申請から許可までは、通常1〜2か月程度かかります。海外から新規に入国する場合は'在留資格認定証明書'の交付申請、すでに日本にいる方の場合は'在留資格変更許可申請'となります。書類の不備による差し戻しが最も多い遅延要因と言われているため、事前のチェックを念入りに行うことをおすすめします。

入国前後の準備が就労開始の質を左右する

在留資格が許可されたら、入国に向けた最終準備です。住居の手配、生活必需品の用意、携帯電話の契約準備など、来日する方の目線に立った受入れ環境を整えます。母国を離れて日本で新しい生活を始める方にとって、住む場所が温かく整えられていることは、大きな安心感につながるでしょう。

入国後は、生活オリエンテーションの実施や市区町村への届出を経て、就労開始となります。また、受入れ後速やかに介護分野特定技能協議会への加入手続きを行うことも忘れてはなりません。こうした一連の流れを、事前にタイムラインとして整理しておくことで、準備の抜け漏れを防ぐことができるでしょう。

外国人介護士の定着支援で大切なことは?

受入れ手続きが完了しても、それはゴールではなくスタートという点です。外国人介護士に長く活躍してもらうためには、受入れ後の'伴走'が欠かせません。

最初の3か月は手厚い伴走体制を組む

来日直後の3か月間は、業務面・生活面ともに最も支援が必要な時期でしょう。先輩職員とのペア体制で業務にあたり、週に一度は振り返り面談を実施する仕組みが効果的です。この時期に'困ったことがあれば相談していい'という安心感を持ってもらえるかどうかが、その後の定着を大きく左右すると言われています。

一方、日本人職員への事前研修も重要な準備の一つです。文化や宗教上の配慮事項を共有し、'管理する・される'ではなく'一緒に働く仲間'として迎える意識を施設全体で育てていく必要があります。

キャリアパスの明示が長期定着につながる

外国人介護士にとって、将来の見通しが立つことは働き続ける大きな動機になります。特定技能1号の在留期間は通算5年が上限ですが、介護福祉士の国家資格を取得すれば在留資格'介護'への変更が可能となり、在留期間の制限がなくなります。この道筋を入職時から丁寧に説明し、国家試験対策の学習支援を日常的に行うことが大切です。

また、日本語能力試験N3やN2の取得に向けた学習時間を勤務スケジュールに組み込む配慮も、本人のモチベーション維持に効果的でしょう。'この施設で成長できる'と実感できる環境を整えることが、結果として離職の防止につながっていく傾向があります。

まとめ

外国人介護士の受入れは、前提条件の確認から手続き、定着支援まで、多くのステップを踏む必要があります。全体像を把握し、3か月から6か月のタイムラインを意識して計画的に進めることで、初めての受入れであっても着実に準備を整えることができるでしょう。

大切なのは、手続きを'こなす'のではなく、来日する方と'ともに歩む'姿勢で一つひとつのステップに向き合うことです。制度を正しく理解し、現場全体で受入れ体制を築いていくことが、外国人介護士の活躍と施設の未来を同時に支える力になっていくでしょう。

よくある質問

Q. 受入れ手続きの開始から就労まで何か月かかる?

A. 一般的に3~6か月程度かかります。最初の1~2か月は体制整備と人材選定、2~4か月目は契約・在留資格の申請手続きに充てるスケジュールが標準的です。在留資格の申請から許可までは通常1~2か月程度です。

Q. うちの施設は受入れ対象になる?

A. 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、通所介護(デイサービス)、グループホームなど介護保険法に基づく事業所が対象です。2025年4月からは訪問介護事業所でも一定の条件のもとで受入れが可能になりました。

Q. 登録支援機関とは何をしてくれる機関?

A. 特定技能外国人への法定支援(入国前ガイダンス、生活オリエンテーション、定期面談など10項目)を代行する機関です。多くの介護事業所が委託しており、支援計画の策定から日常のサポートまで包括的に対応してもらえます。

Q. 定着支援で最も重要なポイントは?

A. 来日直後の3か月間に手厚い伴走体制を組むことが最も重要です。先輩職員とのペア体制での業務、週1回の振り返り面談、そして介護福祉士取得を含むキャリアパスの明示が、長期定着につながる3つの柱と言えます。

参考文献・出典

ともにケア編集部
介護の現場に通い、施設長とスタッフの声をそのまま届ける取材チーム。制度よりも"温度"を大切にしています。
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